2023.01.25 【新春インタビュー】 アイ・エス・ビー 若尾一史社長

リカーリングビジネス伸びる

―2022年は、コロナ禍に加え、ウクライナ問題、原材料の高騰、部材不足などがありました。一方でDX(デジタルトランスフォーメーション)なども進展しました。この一年を振り返られてどうですか。

 若尾 特に半導体不足の影響が大きかったですね。グループ会社でセキュリティー関連の開発・販売を行っているアート社の製品などが半導体不足の影響をまともに受けました。この分を、当社と連携して取り組んでいる出入管理システム「ALLIGATE」やリカーリング製品などの業務でリカバリーしました。

 ICT市場全般としては、やはりDXに向けたデジタル化の需要が活発で、当社も多くの案件を獲得できています。

―23年については、どうみておりますか。

ICT業界には追い風

 若尾 大きく変わるとは思っていません。長期的な視点でICT業界は、追い風だと思います。しかし、22年もウクライナ問題をはじめ、予測不可能なことが多く起きました。アンテナを張って、早く対応できるようにし、今の仕事を着実に取り組んでいくことが必要だと思っています。

―新型コロナ発生から3年が経過しました。リモートワークなど働き方が大きく変わりました。ウィズコロナ時代の新しい働き方については、どう思われますか。

 若尾 当初は、政府の方針もあって、コロナ対策としてリモートワークが進みましたが、昨年くらいからコロナ対策に加え、いかに業務の効率化を図っていくかに広がってきています。ハイブリッドワークが定着した中、働きがいを高め、一方でセキュリティーやコンプライアンスを順守し、業務効率を上げていくなど、働き方をもう一段ブラッシュアップできると思っています。

―22年度(12月期)業績は、第3四半期までの累計(1~9月)では売上高が前年同期比112%、営業利益が同129%の大幅な増収増益となっています。通期の見通しや23年度の計画についてはいかがですか。

 若尾 21年度策定した「中期経営計画2023」に基づき、事業戦略を取り組んでいます。22年度は、引き続きIT投資需要が高く、モビリティ、ビジネスインダストリー、エンタープライズの3分野において受注が堅調に増加し、営業体制の強化やソリューションの強化でプライム案件を獲得しました。

―モビリティ、ビジネスインダストリー、エンタープライズ、プロダクトの四つの事業セグメントの強化を図っています。事業の進捗(しんちょく)状況や今後の強化策についてはどうですか。

 若尾 モビリティは、アンドロイドという強みを持ち、アンドロイド自体さまざまな市場に浸透しつつありますが、車載、AV家電分野を強化し、EV(電気自動車)、自動運転などが好調です。

 ビジネスインダストリーは、グループ連携で大型のプライム案件を受注しているほか、医療クラウドにより新規顧客も開拓しています。

 エンタープライズは、インフラ系は半導体不足の影響を最小限にとどめるため、クラウド案件にシフトのほか、金融系に注力しています。公共系も着実に取り込んでいます。

 プロダクトでは、グループのアート社の入退出管理システム「ALLIGATE」と当社のソフトウエアを組み合わせたソリューション、MDM(モバイルデバイス管理)製品などが好調で、リカーリングも大きく伸ばしています。

高付加価値ソリューション提供

―21年度からISBグループの中期経営計画2023「新しい一歩~move up further~」に取り組んでおられますが、進捗状況はいかがですか。

他社との連携も視野

 若尾 当社は20年に創業50周年を迎え、21年度から新生ISBグループとして新たな領域へ挑戦し、多くのお客さまにソリューションを提供する企業を目指しています。

 中期経営計画2023では「顧客開拓、有望分野の拡大」「ソリューション事業の創出」「グループ経営の強化」を重点戦略に掲げ、23年度で売上高300億円、営業利益24億円、営業利益率8%を計画しています。

 顧客開拓、有望分野の拡大では、提案営業強化により、有望分野を相応に開拓しています。医療分野では、新型コロナウイルス感染拡大に伴い規制が緩和されたオンライン診療をはじめ、医療業界のDXの高まりに応え、医療法人向けに患者、病院、薬局など一気通貫する医療クラウドによるソリューションを提案、新規案件を獲得しています。

 ソリューション事業の創出では、プロダクトと特化した知見と幅広い業務実績を融合し、新しいビジネスモデルへ挑戦しています。他社製品、サービスとの連携による高付加価値ソリューションの提供で、プライム案件が増加しています。

 グループ経営の強化では、グループの理念体系を共有し、グループ連携による事業拡大、管理業務の効率化に取り組んでいます。現在、国内8社と海外の1社、合計9社のグループの全国拠点とシステム開発や人材採用・育成など人的資本でも連携を強化しています。

 今後、事業規模、事業領域の拡大のために、同業他社のソリューションパートナーとの連携も進めています。事業を補完するM&Aは、常に視野に入れていきます。

―リカーリングビジネスが好調ですが、どのような製品が伸びていますか。

 若尾 リカーリング製品として、新製品・新サービスを積極的に投入しています。Teamsが利用できるクラウド型のMDMサービス「vectantSDM」、入退出管理システム「ALLIGATE」、建設現場用カードリーダーの3製品で、年率30%超の高い伸びとなっています。今後も成長が見込まれ、力を入れていきます。

―IT人材不足が社会的にも大きな課題になっています。特に先端技術者の育成、確保など急がれます。グループの人的資本強化についてはどう取り組んでいかれますか。

グループ挙げ人材育成

 若尾 モビリティ、クラウド、AIなど技術革新に対応するため、先端技術者の育成は急務です。当社は、技術者集団であることを明確に打ち出し、今後、確保・育成する技術スキル目標設定のほか、人事制度も見直していきます。グループ会社テイクスは、独自のラーニングシステムで、未経験者の技術者育成にも取り組んでいます。

―オフショア開発拠点として、ISBベトナムがありますが、海外展開についてはどうお考えですか。

 若尾 昨年、社長就任後では初めて、3年ぶりにISBベトナムに行ってきました。グループの経営方針や決算内容の説明はもちろん、私からのメッセージを伝えることが目的でした。

 オフィスの執務室には、グループのミッション・ビジョンが掲げられ、グループの一体感を肌で感じました。全体会議や同社の経営層と課題解決に向け、直接話し合えたのは有意義だったと思います。

 同社は受注の8割から9割はISBグループからです。グループ経営の安定化に寄与していますが、今後は、当社グループの海外ビジネス展開の一翼を担ってもらいたいと思っています。高付加価値のソリューションを〝武器〟に、海外展開を進めていきます。

SDGs通じて社会課題解決

―サステナビリティ委員会を設けるなど、持続的成長に向けてSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境、社会、ガバナンス)に取り組まれています。

 若尾 社長に就任したときに、まず始めたのが、グループ会社を含めて社員全員にSDGsに対する認識を高めてもらうことでした。当社グループは、創業者の若尾守保の言葉「夢を持って夢に挑戦」の企業理念を核に、卓越した技術と魅力ある製品・サービスで、さまざまな社会課題に取り組んでいます。

 当社の事業そのものがSDGsにつながっています。SDGsやESGを通じて、社会課題を解決する企業を目指していきます。

―最後に2030年を見据えた経営方針をお願いします。

営業力と技術力強化

 若尾 次の節目の60周年に向け、23年は中期経営計画2023の目標を確実に達成したい。顧客開拓、有望分野の拡大では、営業力と技術力を強化していきます。ソリューション事業では、プライム事業を強化するとともに、〝武器〟となるソリューションを創出します。グループ経営では、グループシナジーをより一層高めていきます。

 ISBグループが目指している姿が分かるブランディングも強化していきます。

 時代の変化に適応し、知恵とITの融合により、魅力ある製品・サービスで、お客さまの新たな価値の創造へ向け挑戦していきたい。

(聞き手は電波新聞社、代表取締役社長・平山勉)