2023.07.14 【電子部品技術総合特集】自動車用電子部品の動向 電子部品各社自動運転高度化に対応次世代自動車向けR&Dに力
電子部品メーカー各社は、自動車の技術変革に向けた技術開発を強化している。現在の自動車市場ではCASEをメガトレンドとする技術革新や業界の構造変革が進み、エレクトロニクス技術の重要性がより高まっている。脱炭素要求の強まりにより、世界のEV市場は2025~26年ごろから一気に拡大すると予想される。ADAS/自動運転技術も一段と高度化していく。電子部品各社は、中長期のビジネス拡大のための最重要分野の一つに自動車市場を位置付け、次世代自動車向けのR&Dに注力する。
自動車の世界生産台数は、世界的な半導体不足の深刻化やサプライチェーンの混乱が影響し、21年から22年にかけて主要自動車メーカー各社の減産が続いた。23年に入り、ようやく半導体不足が緩和され、OEM各社の生産は回復傾向となっているが、一部の半導体不足の影響などは継続しており、23年の世界の自動車生産台数も17年、18年レベルには達しない見通しだ。
一方で、電子部品メーカー各社の車載関連の受注は20年秋ごろから大きく立ち上がり、21年、22年と活況さが継続した。自動車の総生産台数の伸びが小幅にとどまる中でも、ADAS機能搭載車両の増加など車の高機能化が進んだことで、車1台当たりの電子部品搭載点数は着実に増加。加えて、21年以降のTier1によるBCP在庫積み増しも電子部品需要を拡大させた。
世界の新車販売台数が過去最高レベルに回復するにはまだ数年を要する見込みだが、CASEによるモビリティー革新は、今後も自動車1台当たりの電子部品搭載点数の増加や搭載部品のハイエンド化を促進する。電子部品各社はこれらに照準を合わせ、次世代自動車向けの技術開発や技術マーケティングを強化している。
「オートノマス」では、自動運転車/完全自動運転車の実現に向けて高性能なセンサーや通信デバイス、車載用高速伝送デバイス、ノイズ対策用部品などの開発が加速。
特に「自動走行レベル3」以上の自動運転車では、電子部品にも極めて高い信頼性が要求されることから、AEC-Q200規格対応などの優れた安全性能を備えた電子部品開発が進展している。さらに、将来の完全自動運転車両を見据え、車室内のオフィス空間化やリビングルーム化に向けた新たな技術提案もなされている。
「エレクトリック」では、電動車向けに、大電流・高耐圧部品や次世代パワー半導体部品などの開発が活発化。EVの高電圧化に向けた車載インバーター用の新たな技術提案などが行われている。EVの電費向上のために部品の小型・軽量化も追求され、高性能・高信頼性かつ軽量な電子部品の技術開発が進められている。
回路部品では、アルミ電解コンデンサーは、一般的な電解タイプに加え、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーや導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー(ハイブリッドコンデンサー)のさらなる性能向上に向けた技術開発が盛んだ。コイル、トランス関連では、信頼性の高いIGBT用絶縁トランス、ハイパワーで高性能な電流センサー、高効率のリアクターやチョークコイルなどの技術開発が進展。EV充電デバイスでは、将来の車載バッテリーの無線給電化に照準を合わせた研究開発も進む。
「コネクテッド」では、高速伝送対応や通信品質の向上に向けた電子部品・モジュール開発が活発になっている。「シェアード&サービス」ではMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)向けに、AI技術の活用やサブスク型の新たなビジネスモデル構築なども追求される。
車室内の利便性や快適性、安全性の向上に寄与する新機能の提案などにも力が注がれる。車載ECUの統合化(統合ECU)や、電子制御ユニットのHPC(ハイパフォーマンスコンピューター)へのシフトに伴う搭載部品の技術要件高度化に対する対応も進む。パワートレイン系では、より耐熱性を向上させた150度対応の回路部品や接続部品開発も進展している。