2020.02.21 【インバータ用部品特集】インバータ、様々な分野で活用

電流を高精度に検出する低抵抗、ハイパワーのシャント抵抗器

インバータでは400-450V定格のアルミ電解コンデンサが広く使用されるインバータでは400-450V定格のアルミ電解コンデンサが広く使用される

 電子部品メーカーがインバータ用部品への取り組みを強化している。

 省エネ化に向けてインバータは、産業機器から自動車分野のxEV、エアコンなどの家電製品まで幅広く利用され、中長期的に成長が続く。各社では、高信頼性、高性能なパワー用部品の新製品開発、拡販に弾みをつける。

 インバータは一般的にパワー半導体のON/OFFのスイッチング機能を利用して直流を交流に変換する電源回路・装置。交流をいったん直流に変換(コンバート)した後、平滑コンデンサで整流し、再び直流を交流に変えて、周波数と電圧を調節する。

 具体的な役割は、モーターの回転数を変えることだ。省エネ効果が特徴で、インバータを導入することによってエネルギーを効率良く使うことができる。

 用途は、半導体製造装置をはじめとする各種製造装置、工作機械、建設機械、搬送機械、空調システム、化学などのプラント、健康・医療・福祉など。様々な産業分野で活用されている。

 また、インバータは一般産業分野に限らず、xEVなど自動車や、太陽光および風力といった再生可能エネルギーなどにも応用され、果たす役割が大きくなりつつある。

 白物家電分野でも、省エネ化を推進するためにエアコン、冷蔵庫、洗濯機など、モーター駆動の製品で採用が定着化している。

 米中貿易摩擦の問題が長期化していることや、過剰な設備投資で余分に作り過ぎて在庫調整が続いていること、さらには、中国をはじめ世界経済が減速していることなどから、産業機器分野にとどまらず、自動車や通信分野まで動きが鈍く、19年のインバータ需要は低迷した。

 今年も中国・武漢で発生した新型肺炎が世界に広がり、世界経済は低迷したまま。当然、インバータ需要も低調に推移している。

 しかしながら、世界中で省エネ化、環境保全に対する取り組みは継続。今後、自動車はxEVの普及が進み、エアコンなど家電製品のインバータ化率も高まるだろう。

 さらに産業分野では、FA、各種製造装置、ロボットをはじめ、交通、電力、情報通信、建設など、様々な分野で活用される。見方を変えれば、モーターの普及とともに需要が伸びることになる。

 電子部品メーカーにとって、インバータ用部品は生産台数の伸長に加え、単価が高いのも魅力。そのため、特性、性能、信頼性を重視した製品戦略でインバータ向けの事業拡大に取り組むメーカーが目立ってきた。

シャント抵抗器に各社が注力

抵抗器

 パワー抵抗器は、絶縁塗装やセメントといった高信頼性外装で、巻線、酸化金属皮膜などの抵抗体を内蔵したもの。信頼性をさらに高めるため、ヒューズ内蔵タイプなども供給されている。

 抵抗器各社がインバータ用で特に注力しているのが電流検出用途向けのシャント抵抗器だ。十分な定格電力を持ち、低抵抗を実現し、大電流に対応する。抵抗素子には厚膜、薄膜、巻線、金属板などが用いられ、特に金属板タイプのシャント抵抗器の需要が伸びている。

 インバータ回路におけるシャント抵抗器を使った電流検出は、高効率化に重要な役割を果たす。磁気方式に比べて小型で温度の影響が少なく、正確に測定できるのが特徴。4端子構造ではより高精度の抵抗温度特性を得られる。

 また、インバータ回路では容量負荷や誘導負荷が多数存在し、回路内でサージやパルスが発生するが、このような用途に適する抵抗器として、サージ・パルス負荷への耐性を高めた製品がある。

 インバータ回路での電圧監視用途として高電圧対応の薄膜分圧抵抗も用意されている。数百Vから1000Vクラスの高電圧を高精度に検出し、しかも省スペースを実現するソリューションだ。

高効率・小型化など要求に応える

コイル/トランス

 コイル関係では、リアクタや電流センサーなど多くの巻線応用部品が使用されている。

 リアクタには飽和磁束密度が高く、鉄損の小さいコア材料が求められる。ケイ素鋼板に加えて、ダスト(圧粉)コアやアモルファスコア、フェライトコアの採用も用途別に使い分けられるようになってきた。

 プロセス技術では、一般的にはコアに丸型銅線を巻線するが、最近は各種コアに平角線を縦巻線した構造のエッジワイズコイルが用いられる。

 これは巻線部の面積効率を高めて、小型化することが一つの目的。また、線材ではコストを配慮して一般的な銅線の代わりにアルミ線を利用するケースもある。

 電流センサーは一般的に、ホール素子を応用した製品の採用が進む。電流を敏感に、かつ高精度に検知できる製品が望まれている。磁気回路を利用しているため、誘導ノイズを発生しない工夫が施されている。

 トランスは、スイッチング素子の高周波化、高電圧化などに伴う新製品開発が進展。GaN、SiCといったシリコンに替わるデバイスの出現に対応し、低損失、高効率、小型化できる絶縁トランスの開発などが行われている。

 チョークコイルは、フェライトやアモルファスといったコア材質の高性能化、巻線工法や磁気回路設計の最適化などの融合技術をベースに新製品開発が進む。

 特に小型化とノイズ除去性能を両立し、高機能・高密度化を達成、ノーマルモードとコモンモードチョークコイルの二つの機能を一つのコイルで実現できる複合チョークコイルなども開発された。

小型、大容量、高リプル、低ESR

コンデンサ

 コンデンサ関連では、平滑コンデンサとして、アルミ電解コンデンサの重要性が高い。小型かつ大容量で、高リプル、低ESRといった特性が求められる。

 大型アルミ電解コンデンサは、産業機器分野のインバータなど、定格電圧400-450Vクラスを中心に、各種電源向けの高信頼性製品が開発されている。

 既に、ねじ端子型では定格電圧700V、基板自立型では同600Vまで高耐圧化しており、今後、フィルムコンデンサの市場領域まで需要が広がる見通しだ。

 二次側平滑用としては、電解液を使用したコンデンサに加えて、電解液を使用せず、電極材料に導電性高分子を使用した導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、電解質に導電性高分子と電解液を複合使用した導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)も新製品開発が加速。ハイブリッドコンデンサは、チップタイプで80V程度まで高耐圧化を実現した。

 フィルムコンデンサでは、誘電体フィルムにメタライズド(蒸着)ポリプロピレンフィルムを使用したものが圧倒している。

 高耐電圧、寿命が長く高信頼性、メンテナンスフリー、周波数特性に優れ、低損失、低発熱、安全性が高い、無極性--といった特徴が幅広く受け入れられている。

 具体的な用途は、フィルタ用、スナバ用、共振用、カップリング、雑音防止用のほか、力率改善のための進相用、モーターの始動促進用など。製品、技術開発が活発化しているのは産業機器、再生可能エネルギーの分野だ。

高耐圧化、大電流対応が活発化

パワーデバイス

 インバータのキーデバイスがパワーデバイスおよびモジュール。シリコンベースのMOSFET、IGBTが、定格電圧、定格電流などにより、用途に最適化する形で供給される。

 スイッチングデバイスは、耐圧、電流、スイッチング特性、ON抵抗の四つの要素で構成され、これら技術の進化によって、インバータの省エネ、小型、高効率化などを図る。

 これまで、特に高耐圧化、大電流対応の開発が活発化しており、その中で、シリコンを代替する材料として、SiCやGaNを使ったスイッチングデバイスの開発に加速がついた。

 現在は汎用インバータからエアコン用インバータ、さらにxEV用インバータまで、SiC-IGBTなど最新デバイスの利用が本格化している。

 SiCパワーモジュールは、EVの800Vシステム対応次世代SiCインバータへの採用が決まった。EV用インバータは現在400Vが主流だが、システムの軽量化や充電時間短縮のために高電圧化、高出力化が求められ、高耐圧化を推し進めた。

【インバータ用部品特集】目次

●インバータ、様々な分野で活用
KOA シャント抵抗器「SLP」 幅広い抵抗値範囲もつ
スミダコーポレーション 車載用インバータ向け製品拡充