2023.08.11 リコーと日本ガイシがVPPシステムの構築開始 分散型IDの活用は世界初

 リコーと日本ガイシは、人工知能(AI)などデジタル技術を活用したカーボンニュートラル達成に向けた取り組みで連携強化を加速している。両社の合弁会社NR-Power Labでは、ブロックチェーン技術による分散型IDで、低コストで堅固なセキュリティーを実現するVPP(仮想発電所)システムの構築を開始、早期の実用化を目指す。

 2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーの活用などさまざまな取り組みが行われている。リコー、日本ガイシは、ともにRE100(事業使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ)に加盟、22年5月からは再エネトラッキングの実証事業を進めてきた。

 今年の2月からは、電力事業に関する合弁会社NR-Power Labの事業を開始している。NR-Power Labでは、日本ガイシが保有する大容量のNAS電池などの蓄電池制御技術と、リコーのデジタル技術を活用した再エネ流通記録プラットフォームを組み合わせることで、カーボンニュートラル達成に不可欠な再エネの普及拡大のためのサービス提供を目指している。

 具体的には、VPPサービス、電力デジタルサービスの早期事業化に取り組む。VPPは、再エネの発電量や蓄電池への充放電、施設や家庭などの電力消費などさまざまなエネルギーリソースをデジタル技術で統合制御することで、あたかも一つの発電所のように機能させるもの。季節や天候により発電量が左右される再エネの安定的、効率的な利用に寄与する。

 電力デジタルサービスでは、ブロックチェーン技術などのデジタル技術やIoT技術により、付加価値を高めた新しい電力サービスを提供する。

 今回、分散型IDを活用して低コストで堅固なセキュリティーを実現するVPPシステムの構築を開始した。23年度内にシステムを構築し、24年度から実フィールドでの検証を行う。

 同システムは、多種多様なエネルギーリソースをAIにより自動で最適制御する。また、エネルギーリソースが増大した場合でも、分散型IDにより一つ一つのエネルギーリソースから提供されるデータを正確に把握できるため、従来のシステムで必要だった設備投資や人員削減も可能になる。分散型IDの活用は世界でも初めてとなる。

 システム構築では、新たに連携したIoTスタートアップ企業のCollaboGate Japan(東京都渋谷区)の分散型IDプラットフォーム「NodeX(ノードクロス)」、Sassor(東京都目黒区)のエネルギーリソース最適制御AI「ENES」、日本ガイシの蓄電池制御技術、リコーのブロックチェーン技術をはじめとするIoT・デジタルを融合させた。

 24年度の実証には、IHI、タクマエナジーなど8社が共創パートナーとして参画する。