2023.08.23 大平洋金属とマイクロ波化学、マイクロ波を利用したニッケル精練技術を共同開発 化石燃料からの脱却図る
大平洋金属とマイクロ波化学は、マイクロ波を利用したニッケル精練技術について共同開発契約を締結した。ニッケル鉱石製錬時のCO₂排出の主要因である煆焼(かしょう)プロセスを、従来の石炭燃焼のエネルギーからマイクロ波に置き換えることで、大幅な省エネ・脱炭素化を目指す。両社は今後、小型実証試験を共同で進め、事業性を検証する。
金属精錬分野では、2022年5月に経済安全保障推進法が成立し、現在、特定の国に依存している特定重要物資に指定された金属鉱産物(レアメタルなど)の安定確保が急務となっている。その一つであるニッケルは、ステンレス鋼や電気自動車(EV)用リチウムイオン電池に必要とされる重要な金属鉱産物だ。
大平洋金属は、ニッケルを中心に金属精錬技術を有し、海外から輸入するニッケル鉱石を主原料とした鉄とニッケルの合金であるフェロニッケル(ステンレス鋼の原料)を国内で製造している。中期経営計画の重点施策に「GHG排出量の低減」を掲げ、プロセスの化石燃料からの脱却を計っている。
マイクロ波化学は、14年に世界で初めてマイクロ波を用いた大型化学プラントでの製造プロセス開発に成功。近年は鉱山開発プロセスに向けてマイクロ波技術プラットフォーム「Green Mining-MXTM」を構築している。
両社は、ニッケル鉱石製錬時のCO₂排出の主要因である煆焼プロセスを、従来技術で使用している石炭燃焼のエネルギーから電気で発生するマイクロ波に置き換えることについて22年からラボ検討を実施してきた。煆焼プロセスは、鉱石に含まれる結晶水を高温で完全除去するための熱処理プロセス。その結果、CO₂排出量の大幅な削減や熱効率改善による省エネルギー化の見通しを得た。
今回の共同開発では、両社で小型実証設備にてスケールアップに必要なデータを取得するために試験を行う。良好な結果が得られれば、今後、次のステップである大型実証機での実証稼働に進み、30年度をメドに実機導入を目指す。これにより、国内でのニッケル安定供給に貢献する。実証試験はマイクロ波化学大阪事業所で今冬頃から開始する。
マイクロ波化学の試算によると、煆焼プロセスをマイクロ波に置き換えた場合の(従来プロセスに比較した)改善効果は、CO₂排出量削減は同社全体排出量の3割程度、熱効率改善による省エネ効果は煆焼工程の2割程度が見込まれるという。
大平洋金属は、新たなプロセスへの転換とともに、同技術を他の金属鉱産物にも応用し、サステナブルな事業を推進する。マイクロ波化学は、さまざまな鉱山開発プロセスにGreen Mining-MXTMを導入し、金属鉱物資源のサプライチェーン強化と脱炭素化への貢献を目指す。
(25日付電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)