2020.02.27 【デジタルカメラ特集】CP+中止 店頭で新モデル訴求を

2020年カメラなど品目別出荷見通し

昨年のCP+は盛況、今年は中止をいち早く発表昨年のCP+は盛況、今年は中止をいち早く発表

デジタルカメラの平均出荷単価推移デジタルカメラの平均出荷単価推移

  今年はプロの報道やスポーツカメラマンが使う、ニコンとキヤノン製光学式ファインダのトップエンド一眼レフカメラの新モデルが4年に1度発売されるオリンピックイヤーに当たる、カメラ産業にとって特別な年だ。

 27日から開催が予定されていた〝CP+2020〟には、各社の新モデルが勢ぞろいする予定だったが中止になった。店頭にはこれからカメラ産業の新時代を切り開く製品が出そろう。しっかり売って、世界をリードするカメラ産業を支援したい。

 今年は大変革が起きる庚子(かのえね)の年。昨年末から中国で発生した新型コロナウイルスは、世界中に広がっている。

 カメラ映像機器工業会(CIPA)は、27日から3月1日に、横浜市のパシフィコ横浜と大さん橋ホールで開催を予定していた、カメラと写真映像の展示会〝CP+2020〟の中止を14日に発表した。

 真栄田雅也代表理事会長は「CP+は、最新のカメラと関連機材を手に取って操作感などを確かめていただけることが最大の特徴である展示会。

 新型コロナウイルスへの有効な治療薬や対処法の先行きが見通せない中、約7万人の来場者と出展者の感染リスクを排除し切れない可能性があり、健康や安全面などを第一に考えて開催を中止することにした。楽しみにされていたカメラ愛好家の方々に申し訳なく、本当に残念だが、ご理解いただきたい」と会見で話した。

 カメラ各社は、次世代を見据えた意欲的製品を開発して出展に備えていた。同展は国内外から7万人の来場者が見込まれる大規模催事で、展示されるカメラやレンズの新製品を実際に操作し、ファインダをのぞいて、使い勝手や性能を確かめることができるのが最大の特徴だ。

 来場者と出展者の健康と安全を第一に考えた英断だったと、評価されている。カメラ産業苦渋の決断以降、地方自治体をはじめ、多くの催しが追随している。今週末から店頭には新モデルが出そろい始める。心待ちにしていた写真愛好家のためにもしっかり売りたい。

19年の実績と20年の見通し

 CIPAがまとめた19年のカメラとレンズの出荷実績と20年の出荷見通しでは、19年のデジカメ総出荷は前年比78.3%の1522万台。交換レンズは同79.0%の1424万本だった。

 カテゴリ別では、レンズ一体型カメラのコンパクト型が676万台で同78.0%。レンズ交換式カメラ(一眼レフ、ミラーレス)は848万台で同78.6%。ミラーレスが同95.6%と健闘したが、一眼レフの減少が目立っている。

 製品単価は、レンズ交換式も一体型も上昇を続けていて、交換レンズはカメラ本体の約1.7倍の出荷規模。20年のデジカメ出荷の合計は1167万台で同76.7%。交換レンズは1190万本で同83.6%と見通している。

 厳しい数字だが、従来とは異なる市場構造が固まりつつあり、各社の新モデルのコンセプトは斬新なものが多く、新時代を開拓することが期待される。

ミラーレス、交換レンズ、用途特化コンデジに期待

 グラフは、レンズ一体型のコンパクトデジカメ(コンデジ)と、レンズ交換式一眼レフカメラのペンタプリズムファインダとミラーが組み込まれた〝光学ファインダ一眼レフ〟と、電子ファインダ方式で光学式に比べて小型軽量の〝ミラーレスデジカメ〟の単価推移を示している。

 一眼レフカメラの単価が下がり、コンデジもミラーレスも単価は上昇している。ミラーレスはAPS(アドバンストフォトシステム)サイズ(23.6×15.8㎜)センサーが主だったが、一眼レフが使っている35㎜フィルム(35×36㎜)と同サイズの撮像センサー内蔵の〝フルサイズミラーレスカメラ〟を各社が開発して19年に一斉に発売になり、好評だ。

 解像度が高く、より精細な写真が撮影できる。その一部を拡大して切り取って使うトリミングをしても、画質の劣化が少ない。フルサイズの一眼レフと比較すると軽量。

 断固、一眼レフを貫いていたプロやハイアマチュアも、電子ファインダが光学ファインダとそん色ないほどに基本性能が向上したこともあり、魅力を感じて買い替えが始まっている。

 センサーサイズの大きい中判(44×33㎜)モデルも、小型軽量で手持ち撮影できる製品として登場している。1億万画素のセンサーを搭載し、手持ち撮影ができるミラーレスも店頭に置かれ、「高額だが予想をはるかに超える受注量」(富士フイルム)と好調。

 コンデジは、スマホにはない専用機としての特徴を持つ斬新な製品が発売されている。超望遠で3000㎜相当、光学125倍までのズームレンズ付きのコンデジでは、月面のクレータも鮮やかに撮れる。4K動画も撮影でき、価格も手頃で好評を得ている。特別なハウジング無しで水深30メートルに耐えるコンデジもある。高度や水深、電子コンパスも表示でき、4K動画も撮れる。

 今のカメラユーザーは明らかに変化しつつあり「一眼レフの単価下げ止まりが反転の兆しになる」と予測する業界関係者は多い。

統計外のカメラの売れ行きも好調

 店頭やネットでは、統計範囲外のインスタントカメラやフィルムカメラ、360度撮影カメラやアクションカメラ、ドローンなど新しい撮影機材が台頭してきている。

 インスタントカメラの〝チェキ〟は、年間1000万台売れている。また、スマホやデジカメで撮影した写真を〝チェキプリンター〟でプリントするブームが起きている。若者がフィルムカメラを持つようになった。ボーダーレス時代に合わせた、映像機器の統計分類の見直し時期も来ているようだ。

【デジタルカメラ特集】目次

●CP+中止 店頭で新モデル訴求を
パナソニック「S1H」 シネマ品質の映像撮影可能
富士フイルム「X-T4」 6.5段手ブレ補正搭載