2020.03.06 電機各社の新型コロナ対策 小中高一斉休校に対応し在宅勤務拡大や休暇制度緩和

一斉休校などに対する主な対策

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために今週から全国の小中高校で一斉休校がスタートしたことを受け、電機各社は本格的な対応に乗りだした。

 既にテレワークや時差出勤などを推進している企業が大半を占めるが、一斉休校に伴い在宅勤務の拡大や休暇制度の緩和を決めるところも増加。各社とも引き続き状況を注視しながら、制度変更なども含め柔軟に対応策を講じていく考えだ。

 政府の要請を受けて今週から本格的に始まった一斉休校のため多くの企業が対応に追われ、在宅勤務や有給休暇取得の推奨に加え、子連れ出勤を認めるところなども出ている。

 電機各社も対策を本格化。既に実施している時差出勤やテレワークの推奨に加え、有給休暇の特例なども設けて対応を強化している。

 総合電機では、日立製作所が小中高生、特別支援学校生の子どもがいる従業員約1万人に31日まで在宅勤務を認めた。併せて、年次有給休暇、子の看護休暇(小学校就学前の子1人につき年5日まで)、家族看護休暇(看護を必要とする家族1人につき年5日)の取得のほか、予防休暇(給与80%支給)の取得もできるようにした。

 東芝は、国内全従業員8万人を対象に在宅勤務と時差通勤の推奨を進めているが、月8回までのテレワークの上限を撤廃。テレワークをするためのインフラ整備にも着手し、現在は1万人規模の通信環境を整えた。3月末まで、子どものいる従業員に有給休暇の取得を推奨するとともに、消化できなかった年次有給を積み立てて社会貢献活動や自己啓発活動などに使える「ワイドプラン休暇」も取得できるようにした。

 三菱電機は、年次有給休暇に加え、子どもの看護などで取得できる特別休暇(最大20日)の取得、在宅勤務や時差出勤の推奨について、一斉休校を受けて2月28日に改めて社内で通知した。在宅勤務は全社員約3万5000人のうち、最大約2万5000人が同時に利用可能で、週2日の上限を5日に切り替えている。

 NECは、18年から全社員を対象に導入している回数制限のないテレワーク制度を活用する。既に全社員にPCとスマートフォンを支給しており、約6万人が同時接続できる環境を整えている。一斉休校に対しては在宅勤務を推奨するとともに、年次有給休暇の取得を勧めているという。学校行事や家族の通院、ボランティアなどに活用できる「多目的休暇」(年5日、最大20日繰り越し可)の取得もできるようにした。

 富士通は、小学生以下の子を育児中で、頼れる人がいない社員を対象に、積み立て休暇を証明書の提出なしで取得できる制度を導入し、2日に通知した。1日でも半日単位でも取得可能。既に全社員にテレワークを推奨し、週2回、月8回までとしていた上限も撤廃した。

 ソニーはテレワークと時差出勤を本格化しており、テレワークは月10回までの上限を撤廃し対応している。一斉休校に対しては有給休暇の取得などに加え、対象者には在宅勤務の最大限の活用を通達したという。

 パナソニックやシャープは一斉休校に伴う特別措置は取っておらず、現行制度内で在宅勤務などを実施している。パナソニックでは在宅勤務を積極的に活用する動きが出ているほか、シャープは各部門で、在宅勤務が必要な従業員に個別対応しているという。

特別休暇の付与なども

 電子部品関連各社も在宅勤務の推奨など対応を進めており、特別休暇などの付与を行うところも多い。

 村田製作所は時差出勤やテレワークの奨励に加え、対象者に対し通常の有給休暇とは別枠で3日間の特別有給休暇(分割取得も可)を付与している。休校に伴って4日以上休む場合は、人事評価に影響を与えない特別無給休暇を無期限で取得できるようにした。

 京セラは19日まで対象者の在宅勤務を奨励するとともに、在宅勤務が困難な場合は特別休暇を付与することにしている。

 イリソ電子工業は、対象者の申し出により休業を認める(休業期間中の賃金は60%を支給)ことにした。休業ではなく在宅勤務が業務上必要であると上長が判断した場合には在宅勤務の利用を認めている。

 日本ケミコンは、対象者に育児休職規程の取り扱いを特例として適用し、定時勤務扱いで勤務時間の短縮を認めることにした。勤務時間の短縮措置でも面倒を見ることができない場合、特別休暇の取得が可能。

 指月電機製作所は、3月中は事前申請の上で会社が認めた場合、テレワークをできるようにした。休校に伴う休暇でも有給での特別休暇扱いにしている。要請があれば時差出勤も検討するという。

 従業員の環境に合わせた働き方を推奨する企業も多く、TDKは在宅勤務など柔軟に選択できる環境を用意。ロームは有給休暇の推奨や時差出勤、時短勤務の範囲拡大、手続きの簡素化などに取り組む。日東電工は全従業員を対象に定時の前後1-2時間を目安に時差通勤を奨励している。

 社内制度の緩和などにも取り組む。島津製作所は、育児・介護などで認めていた在宅勤務制度を一時的に全社員へ拡大。アルプスアルパインは対象者の勤務体制を見直し、柔軟な対応を取れるようにした。テレワークの利用要件を緩和し積極的に利用できるようにしている。

 タイコエレクトロニクスジャパンは、リモートワークの回数制限撤廃やリモートワーク非対象部門への拡大などを行い、一斉休校に対し、リモートワークをいっそう推進。オフィスでデスクトップPCを使用する従業員のうち希望者にはノートPCを貸し出し、在宅勤務できるようにした。

 現行社内制度の中で柔軟に対応させる企業では、オムロンは、時差通勤、在宅勤務に加え家庭の事業を最優先に既存の制度の範囲内で柔軟に休みを取ることを推奨。

 堀場製作所は、テレワークの導入とともに以前からの時間有給制度、時差出勤制度を組み合わせて柔軟に対応している。TOWAは、国内3拠点に相談窓口を開設し個々の状況に応じ時差出勤、テレワーク、特別休暇付与などを行うことにした。

 現状では状況把握に努めているところもあり、ヒロセ電機は、学校休校での従業員勤務の影響を調査、有給休暇対応やテレワークなどを検討中だ。

 ホシデンは一斉休校により影響を受けると思われる社員について情報収集中で、影響度を確認した上で対応を検討するとしている。日新電機は、社員の仕事と育児の両立が継続できるよう具体的対策を検討しているという。

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