2023.11.28 量子技術が生成AIの電力問題解決の一助に 東芝の島田社長が講演で強調

オンラインイベントの基調講演に臨む東芝の島田社長兼CEO

 東芝の島田太郎社長兼CEOは、28日に開幕したオンラインイベント「TOSHIBA OPEN SESSIONS 2023」で基調講演した。島田氏は、生成AI(人工知能)の普及に伴い増大する電力消費量の問題に触れ、社会や経済を変革する可能性を秘める「量子技術」が解決策の一つになるとの考えを示した。

 今回のイベントは東芝デジタルソリューションズの主催で、29日まで開催。島田氏は、初日に「データの力で社会にイノベーションを起こす~デジタルプラットフォームによる新たな価値創出~」をテーマに講演した。

 この中で島田氏は、AIによる消費電力量が2040年に世界の総発電量を超えるという予測に触れ、「これらを解決し、かつAIの素晴らしい世界を両立するためには、この電力消費量をどうやって抑えていくのかということを考えるべきではないか」と指摘。「一つには現在のAIを進化させるということもあるが、一方で量子コンピューティング技術によってこれを達成するさまざまな手段を講じることができるのではないか」と力説した。

 量子技術の利点にも言及し、「とてつもなく巨大な空間であっという間に最適化できる」と強調。これまでは荷物の配送ルートや工場の生産計画といった特定領域を最適化する展開だったが、量子技術を駆使することで「幅広く広げて最適化できる」と力を込めた。さらに「量子AI」と呼ぶ将来技術の可能性にも熱い視線を注いだ。

 また、島田氏が代表理事を務める「量子技術による新産業創出協議会(QーSTAR)」についても説明。21年に発足した同協議会の会員数は85会員に到達。23年から量子技術のユースケース(活用事例)を実証していく段階に入ったという。「誰よりも先に世界最先端の技術やユースケース、ビジネスを創生するという協力を惜しまない状態ができている」と、量子技術の社会実装を促す手応えも強調した。