2020.03.31 【関西版】LPWA通信活用し定置網モニタリング ドコモなど5者が「魚っちV」を共同開発
網に設置した魚群探知機センサーの取得情報は、LTE-ဣ怃逊信で陸上から確認できる
NTTドコモ関西支社など5者は、日本初となる海上でLPWA通信を活用した定置網モニタリングシステム「魚っちV(うおっちブイ)」の提供を開始した。同支社法人営業部パートナー推進チームの片山博之ビジネスデザイン担当課長は「省電力のLTE-M通信により、電源がない海上でICT化を実現した」と話す。
定置網漁は、陸から約2-5キロメートル離れた海中に漁場を設置。数㌔㍍に及ぶ直線の「垣網」で回遊する魚の行く手を遮り、魚の習性を利用して「箱網」の中に追い込む漁法だ。
従来の方法では漁師は早朝に出港し、網を引き揚げるまではどれだけの量の魚がかかっているか分からなかった。また、潮の流れが速く網を引き揚げること自体できない場合もあるという。さらに漁獲量は港での処理に使う氷量の調整や、作業員の数にも影響する。
片山担当課長は「漁業での働き方改革は社会課題となっているが、電源がない海上ではICT化が遅れている」と指摘する。
このような状況を解決する「魚っちV」を開発したのは、同社、ホクモウ(金沢市)、東京海洋大学(東京都港区)、タイホー通信工業(大阪市平野区)、アクアサウンド(神戸市中央区)の5者。
魚っちVは魚群探知機センサーを利用、定置網に設置したセンサーが発する超音波の反射波の強弱により、網内の魚群量などを量る。取得したデータは、NTTドコモが提供する省電力広域通信技術LPWA規格のLTE-M通信でクラウドに送信する。
バッテリで動作し、省電力に対応したLTE-M通信を活用することで、長時間駆動ができる。LTEモジュール搭載の通信機器と比べ約2分の1の消費電力(タイホー通信工業調べ)を実現した。
利用者はインターネットを通じ、遠隔からいつでも網内の魚群の量などを確認できる。これにより、操業のタイミングや水揚げ・出荷移送などの事前準備が可能となる。さらに、「潮流に対する漁具の形状(網成り)の変化も出港前の陸上で把握できるため、出漁のベストタイミングを決められる」(片山担当課長)のだという。
19年11月から石川県内で導入・運用を開始、今後、全国での本格展開が検討されている。
片山担当課長は「水産分野では巻き網漁などほかの漁法にも応用できる。農業や鳥獣害対策などにも活用可能だ」と期待を込めた。