2024.04.12 【育成のとびら】〈23〉「都度教える」OJTは誤り 指導者によって成長精度にばらつき

 4月は始まりの季節。新入社員の入社や入職、異動により新メンバーを迎える職場も多いだろう。新入社員や異動してきた社員は期待と不安を抱きつつ、何とかチームになじんで、成果を発揮しようと心を新たにする一方、迎え入れる社員も、「相手はどんな人なのか」「一緒にうまく仕事をやっていけそうか」と、そわそわしているのではないだろうか。

 そんな新メンバーが一日も早く業務に関する知識・スキルを身に付けられるように、多くの職場で「OJT(オンザジョブトレーニング=実地研修)」が実施されている。

 OJTは、既に経験を積んだ職場の上司や先輩が、実際の業務について助言などを与え、業務に関する知識・スキルを伝達する育成方法だ。OJTにより知識・スキルの獲得だけでなく職場の人間関係の構築への足掛かりになりやすいとも言われている。

 当社ALL DIFFERENTの顧客企業の人事責任者・人事担当者277人を対象に実施した2022年の調査では、従業員301人以上の企業で96.8%、300人以下で98.4%がOJTを導入していた。

 半面で導入企業の多くが「担当者によってOJTのやり方や精度にバラつきがある」「担当者は業務指導のみでメンタルケアをする仕組みがない」「担当者任せで、各部署内でフォローやサポートがない」「OJTの全体像やゴールが分からず、場当たり的になっている」という課題を抱えていることが分かった。読者の職場でも、思い当たることがあるのではないだろうか。

定着にも影響

 人が仕事で成長していく際、実際の業務から学ぶものはとても大きく、OJTは非常に有効な育成方法だ。しかし、定義や目的があいまいなまま実施されているケースも少なくない。

 OJTは「教えようと思っている業務が発生した際、先輩や上司がその都度、対応方法やポイントを伝える」というイメージが広く共有されているが、それは誤解だ。

 OJTは、対象者に「いつまでに」「どのような姿になっていてほしいか」というゴールを①マインド②知識・スキル③行動-の3側面から設定することが重要なポイントになる。目指すべき姿の実現のためにゴールから逆算した育成計画が必要になるのだ。

 OJTの目的や育成計画を策定した上で、適切な設計・運用が行われれば、新入社員などの育成効果が高まるばかりでなく、人材の定着や組織の成長スピードの向上なども期待できる。

 これに対して、ゴールや育成計画を設定しないままOJTを実施すると、指導が場当たり的になり、対象者の成長がばらつきやすくなる。その結果、「この会社で働いていても成長できない」という不安を感じた社員の離職リスクが高まっていく。

 本連載は今回から4回にわたって、新入社員育成などに欠かせないOJTの効果が高まる要素やサポート体制の在り方について探っていく。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は4月第4週に掲載予定】