2024.04.26 【やさしい業界知識】クラウドサービス

社内システムと併用も広がる
DX支える基盤技術

 サーバーやストレージ(外部記憶装置)、ネットワークなどのITインフラや業務ソフトをインターネット経由で使えるクラウドサービス。急速に普及する生成AI(人工知能)や、ネットとつながるIoT機器といった最新デジタル技術を駆使して付加価値を生み出すデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みには欠かせない技術だ。

 インターネットの先のサービスを利用していることからクラウド(cloud=雲)と呼ばれるようになったとも、集約したシステムという意味でcrowd(クラウド)と呼ぶとも言われる。

 データセンターに構築した環境で運用され、企業内にITの資産を持たずに利用できるのが特長だ。クラウドの種類はアプリケーションソフトをサービスとして利用するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が代表的。このほか、IT基盤を利用するIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)、特定のアプリケーションサービスをすぐに利用できる基盤となるPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)などがある。

環境により選択

 提供形態は、アマゾン・ウェブ・サービスやグーグル、マイクロソフト、セールスフォースなどのサービスのようにベンダー側のサービスを複数企業が共同利用する「パブリッククラウド」と、自社専用のシステムをデータセンター内に構築しシステムを利用する「プライベートクラウド」に分けられる。いずれもメリットとデメリットがあり、どのようなシステム環境で利用していくか、セキュリティーやサービスレベルなどに応じて選択するサービスは変わってくる。

 最近はパブリッククラウドとプライベートクラウド、さらには自社内構築型システム(オンプレミス)を組み合わせたハイブリッド型のクラウド環境を構築する形態が広がっている。

拡大する市場

 調査会社のIDC Japanによると、2022年の国内クラウド市場規模は前年比37.8%増の5兆8142億円に拡大。27年までの年間平均成長率は17.9%で推移し、26年の市場規模は21年の2.3倍に当たる13兆2571億円と予測されている。

 米新興企業オープンAIが開発した対話型生成AIの「Chat(チャット)GPT」。生成AIの火付け役となったこのサービスも、マイクロソフトのパブリッククラウド「Microsoft Azure」などで稼働する。

 新たに開発されるアプリやサービスをクラウド経由で提供する形は業界の潮流になっているが、クラウドの利用には注意も必要だ。必要な時に必要な分だけ利用できるので、常に最新の機能にアップデートされるといった利点も多い半面、導入規模や頻度によっては費用対効果が出ない場合もある。利用するクラウドサービスによっては、一度使ってしまうとシステム更新や移行で苦労する場合もある。コストもオンプレミスよりクラウドのほうが高額になることもあり、環境に応じてどのサービスを導入するのが適切なのか精査するリテラシーも求められる。

(毎週金曜日掲載)