2024.05.10 【やさしい業界知識】冷蔵庫
省エネなど環境面に焦点
買い替え中心に安定需要
冷蔵庫は、肉や魚・野菜などの食材や飲料・調味料などを長期保存するための必需品として、ほぼすべての家庭に1台は置かれている。
戦後日本で三種の神器と言われ、いち早く普及拡大した耐久消費財の一つだ。普及の初め頃はコンパクトな2ドアや3ドアが主流だったが、最近では大型化し、5ドアや6ドアタイプが主流となっている。
暮らしの多様化に合わせて、年間出荷台数の約45%が庫内容量「401リットル以上」の大型冷蔵庫となっている(2023年度実績/日本電機工業会=JEMA統計)。
冷蔵庫は、家庭で通常24時間稼働し続ける家電製品であり、地球環境問題の解決が大きなテーマとなる現在、第一に「省エネ」が問われる。資源エネルギー庁によると、家庭における家電製品の一日の電力消費割合は、夏季・冬季ともに「エアコン」に次いで「冷蔵庫」が2位(夏季の場合17.8%・冬季14.9%/資源エネ庁サイトから)となる。
メーカー各社では、省エネ性の向上に向け、真空断熱材の採用やコンプレッサー・モーターの回転数を負荷に合わせ最適に制御するインバーター技術の進化など、ハード面での開発に力を入れている。
省エネ性の高さは購入時の大きなポイントとなるが、JEMAによると、ここ数年で大きく進歩し、特に大型冷蔵庫は先進技術を満載し、10年前と比べて電力消費が65%程度に下がっているという。
また環境面では、使用する冷媒についても、脱フロン化が進み、代替フロン(HFC類)からノンフロン(HC類/R600a=イソブタン)への切り替えが進んでいる。
食材廃棄防止も
さらに、近年食材廃棄の問題も注視されるなかで、極力食材を廃棄しないで済むように、湿度を保つなど鮮度保持や急速冷凍など冷蔵・冷凍技術が進化。さらにIoT化を図り庫内の食材を把握することで、無駄な二重買いを未然に防ぐといった機能も開発されている。
JEMAの統計によると、冷蔵庫の23年度(23年4月~24年3月)国内出荷台数は前期比95.1%の344万5000台にとどまった。3年連続のマイナスとなっている。コロナ禍の巣ごもり消費で拡大した需要の反動減や、物価高の影響をそれなりに受けている状況だ。
ただ、普及率が高い商品で、タイガー魔法瓶の調査(24年3月)で最も長く使う家電製品は「冷蔵庫」がトップにあがるだけに、買い替えサイクルは長期化の傾向がうかがえる。内閣府の調査では平均使用年数は13年弱だ。
今後買い替え需要を中心に、長期的には安定した需要が続くとみられている。
大容量ニーズ
冷蔵庫は、共働き世帯の増加でまとめ買い需要が拡大していること、また作り置きニーズも強く、大容量(収納性の良さ)へのニーズは高まっている。また電気代高騰の折、省エネへの関心が高く、さまざまな機能が豊富に搭載される大型冷蔵庫への関心は潜在的に高い。
(毎週金曜日掲載)