2024.05.10 【育成のとびら】〈25〉成長促すアサイン方法 2割の「背伸び」が鍵

 ゴールデンウイークが明け、新入社員がいよいよ現場に配属される時期が近づいてきたという企業が多いのではないだろうか。新入社員研修で学んだことを生かして、実際の業務での成長を目指す第一歩がいよいよ始まる。

 実務を通じて成長を支援するOJTの全体の流れは、育成計画に沿って任せる業務の選定を行い、実際に業務に取り組んでもらった後、遂行した業務の経験から得た学びの振り返りをサポートする「内省支援」というステップで進めていくことが理想的な運用だ(図)。

 こうしたサイクルが繰り返されることで育成対象者の業務についての知識やスキルが効果的に蓄積されるようになる。

 今回はこの中から「業務の量と質の選定」について確認していきたい。

 業務選定では「社会人としての基礎的なスキルを身に付ける」「業界の専門的なスキル・知識を身に付ける」「組織の一員として、自社についての理解を深める」など、目的に合わせて業務内容を検討しアサイン(任命)することになる。

 どのようなアサインであっても共通して重要なのは、選定する業務の量・質と、育成対象者の力量とのバランスだ。

 量については、取り組むことで経験やノウハウが蓄積されるか、あるいは効率化などの改善が期待できるかどうかが目安となる。

 質については、本人がこれまで身に付けた知識・技術をもとに取り組めるものや、今までの経験に基づいて改善できそうなものが中心となる。

 業務の量・質とも、対象者の力量を見極めることが非常に重要だ。本人の力量を下回る量や質の仕事だと退屈や甘えが生じやすくなる。一方、本人の力量を大幅に上回る量や質を与えた場合、業務遂行を諦めてしまう可能性があり、どちらも成長につながらなくなってしまう。

 特に質の面では、これまでの経験から本人が遂行できそうな業務を中心に、2割程度ストレッチ(背伸び)する内容で構成するのが理想的だ。

 ストレッチ業務とは、現在の本人の力量より少し難易度の高い仕事のこと。今までの経験の延長線上にあるものの、達成には一定の努力が求められる業務が、ストレッチ業務と言える。

 ストレッチ業務にアサインする際は、綿密なサポート体制の設計がより一層重要になることも押さえておきたいポイントだ。OJT担当者との密な連携体制構築や、問題発生時の対応方法の検討、定期的な相談の機会の設定などが求められる。

飽きの壁防ぐ

 本連載第7回で社会人2年目社員の49.3%が「仕事が飽きた、つまらないと感じることがある」と答えている当社の調査結果を紹介した。いま、「ゆるい職場」という言葉が象徴するように、成長機会の少なさから離職を検討する若手社員が増えていることが話題となっている。

 こうした若手社員の仕事への飽きや成長への不安の背景には、「業務の量と質の選定」というステップにおけるOJT担当者や上司の認識と若手本人の力量との齟齬(そご)が疑われる。若者は厳しい環境に弱いという思い込みで、一律に業務の量や質を低く見積もるのではなく、適切なサポートの下、ストレッチ業務を定期的に割り当てることで、社会人としての成長がより促される。成長の実感を得られた若手社員は、次のより高い目標に向かって努力する意欲も醸成されるだろう。

 次回は、経験した業務を効果的な学びにつなげる上で欠かせない、「内省支援」についてみていきたい。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は5月第4週に掲載予定】