2024.07.12 【電子部品技術総合特集】脱炭素・カーボンニュートラルの取り組み 環境配慮型製品開発に全力、グリーン調達や再エネ活用など

事業活動における再生可能エネルギー活用拡大が進む(ケミコンデバイス長岡工場)

 電子部品メーカー各社は、気候変動対策、サーキュラーエコノミーの重要性が一段と増す中で、「脱炭素/カーボンニュートラル」への取り組みを強めている。各社は、地球環境保全要求に対応した事業活動として、省エネ・省資源・リサイクルの追求、RoHS指令をはじめとする環境負荷物質規制への対応、環境配慮型製品開発、再生可能エネルギーの活用拡大、スマートファクトリー化による電力使用量削減など、さまざまな観点から環境に優しいモノづくりを追求している。

 気候変動問題は、世界が直面する最重要課題の一つとして、一段と重要度が増している。2020年代に入り、世界各国で「カーボンニュートラル達成に向けた中長期目標およびロードマップ」が打ち出されている。日本でも、20年10月に当時の菅義偉首相が「2050年までのカーボンニュートラル達成」を宣言し、21年には「2030年度に、温室効果ガス(GHG)を13年比で46%削減することを目指す」という目標が表明された。

 最近は、米国系IT企業や欧州系企業などをはじめとして、部品サプライヤーに対するカーボンニュートラル関連の要求事項も厳しさを増しており、中長期ロードマップの中で、30年までにサプライチェーンを含めたゼロカーボンを打ち出している完成品企業もみられている。

 こうした動きに呼応し、21年以降、「カーボンニュートラル達成時期目標」を策定・公表する電子部品企業も増加しており、その達成のための中長期の環境ロードマップ策定が進展している。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報開示や、「RE100」宣言に向けた取り組みなども進んでいる。

 20年12月に発表された、50年カーボンニュートラル実現に向けた政府の「グリーン成長戦略」では、14の重要分野が設定された。14分野には、「自動車・蓄電池産業」「半導体・情報通信産業」「住宅・建築物産業/次世代型太陽電池産業」などが含まれる。

 電子部品技術は、さまざまな産業分野の省エネ・高効率化を促進するイノベーションの源泉としても重要な役割を担っている。各社は、機器や装置の高効率化に寄与する環境配慮型製品開発に全力を挙げている。

 電波新聞社が主要電子部品メーカー対象に実施したアンケートによると、「自社のオペレーションでの再生可能エネルギーの活用の有無」についての質問では、回答30社中、7割の21社が「導入済み」と回答。「近く導入予定」「導入を検討中」を合わせると計29社と全体の9割以上に達する。

 「カーボンニュートラルの達成時期目標」の質問では、回答28社中、7割強の20社が「達成時期の目標を設定済み」と回答し、「近く目標を設定する予定」とした企業も3社を数えた。

 「カーボンニュートラルの達成時期目標を設定済み」と回答した企業に対する「達成時期目標」の質問では、多くの企業が「2050年まで」としているが、早い企業では、「2030年まで」と回答した企業もみられている。

 電子部品各社が推進するSGDsへの取り組みでも、中核の一つに「環境対応」が位置付けられている。各社は、製品の企画・開発から調達、製造、販売、廃棄に至るあらゆる段階で、環境に配慮した事業活動を重視し、部材調達におけるグリーン調達強化や、機器の省エネ・高効率化追求、事業活動における再生可能エネルギーの活用拡大やリサイクルなどの取り組みに力を注いでいる。

 現在の市場では、かつてのように地球温暖化への対応を経済成長の制約やコストと考えるのではなく、成長の機会と捉える時代になりつつある。

 15年に採択された「パリ協定(COP21)」では、世界の平均気温上昇をプラス1.5度以内に抑えるという目標が掲げられたが、現状では目標達成には程遠い状況にあり、今後、官民を挙げて、CO₂排出削減への取り組みをより加速していく必要がある。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「1.5度目標達成のためには、少なくとも25年までに世界のGHG排出量を減少に転じさせ、30年には19年比で43%程度削減する必要がある」としている。

 23年末にアラブ首長国連邦・ドバイで開催された「COP28」では、1.5度目標達成のため、GHG排出量を19年比で30年までに43%、35年までに60%の大幅削減が必要との認識が示された。さらに、30年までに全世界の再生可能エネルギー容量を3倍にするという新たな目標も設定されている。

 電子情報技術産業協会(JEITA)が21年末に発表した、カーボンニュートラルの実現に向けた動向調査によると、デジタル技術の社会実装により30年で55億9000万トンのCO₂削減が見込まれる。