2024.07.12 「とがった家電出す」 大手家電、夏以降の戦略 需要には慎重な見方も

趣味嗜好の強いテレビは画質・音質に加え、大型化の提案も重要

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 大手家電各社は、夏商戦後の2024年後半戦に向け、消費者の需要に合わせた価値ある製品展開を強化し、需要の取り込みを狙う。円安や物価高騰、消費行動の多様化で国内家電市場はこの先も不透明感がある半面、市場で価値を評価された製品が売れる流れになってきた。消費行動に合わせたマーケティングも今後は鍵になりそうだ。

 国内の家電市場をめぐっては各社とも慎重な見方だ。前半戦は、早い時期からの猛暑でエアコンなどの出足は良いものの、全体需要は伸び悩んでいるからだ。家電幹部は「後半戦に向けても前半と同様の動きになる」との見方を示し、市場動向を注視している。

 一方、電気料金の高騰や物価高で節約志向が強まっており、省エネモデルへの関心は高い。消費者に刺さる機能などが販売に直結するケースもある。パナソニックやシャープは特定の需要に合わせた製品展開で成果を出している。

 シャープの菅原靖文常務執行役員は「局地戦で健闘した製品があった」と振り返る。小型かつ速乾性に優れたドライヤーが好評で、「速乾ニーズへの対応と新たなプロモーション施策で活性化できた」と話す。後半戦も「とがった製品を積極的に出していく」とする。

 パナソニックは新たなシェーバーとして展開した「ラムダッシュ・パームイン」や高周波治療器「コリコランワイド」が好調に推移。後半戦ではAI(人工知能)カメラを搭載した大型冷蔵庫などを積極提案していく考えだ。パナソニックくらしアプライアンス社の堂埜茂社長は「お客さまに支持され愛される製品を積極投入する」と力を込める。

 白物家電専業の東芝ライフスタイルは、前半戦は大型製品を中心に市場平均より高い成長ができたとみる。白戸健嗣社長は「求める機能や価値に対して納得感のある価格で提供できた」と分析。市場の声を反映させることに注力し、声を受けて新たに投入した冷凍庫も堅調とする。

 後半戦の市場見通しをより厳しくみている三菱電機リビング・デジタルメディア事業本部の尋木保行本部長は「自社の製品価値をお客さまにしっかりアピールしていきたい」と話す。冷蔵庫は全室独立構造とAI技術を訴求。炊飯器には低温調理機能も搭載し、調理機としての提案を行っていく考えだ。

 趣味嗜好(しこう)性の強いAV機器は、今月下旬からのパリ五輪といったスポーツイベントを控えているものの、市場拡大に対しては慎重な見方が強い。

テレビ専業のTVS REGZAの笹川知之副社長は「先行き不透明な市場にどのような影響があるか注視したい」とする。テレビ各社は視聴環境に合わせた機能を拡充する中で、はやりの〝推し活〟を支援する機能を用意。「当社にしかない優位的機能になる」と、SNSや店頭、CMを組み合わせたマーケティング施策を進める。

 後半戦では省エネ・節電に向けた提案が不可欠になる。各社ともこれまで以上に収益の確保が命題になっているが、消費者の省エネ志向の強まりを追い風に、省エネ性能の高い高級モデルを訴求できるかも重点施策になっている。