2024.08.30 【ソリューションプロバイダー特集】各社の事業戦略 NECネッツエスアイ・大野道生社長

働く環境の改善を支援
次期中計「変革」の第一歩に

 前半戦の市場は、高速通信規格5Gの伸び悩みや低料金プラン競争もあって国内キャリアの投資は厳しい状況だったが、全体的にはDXのニーズが継続している。

 生成AI(人工知能)をキーワードに、リソース確保に向けた環境整備を進める企業も増えている。散らばっているデータを一つのプラットフォームに集約するために、クラウド移行やサイバーセキュリティーを含めたネットワーク整備の需要は広がっている。

 人員確保に向けて働きやすい職場環境を整備するニーズが高まり、オフィス改修の商談も増えている。

 働き方の改善は生産性向上につながることから、製造現場の工場や自治体、病院など裾野が広がってきた。職場の改修に合わせてネットワークの強化など、さまざまなデジタル技術を提案することで職場全体のDXを支援している。

 工場のDXでは、ローカル5Gが必要なのか、Wi-Fiで対応できるのかなど、事業内容や現場の状況を踏まえて最適な商材を薦めることができる。ハードからソフトまで現場に近いところで仕事をしてきた当社の強みだ。

 更新期を迎えた自治体の消防指令システムや防災無線などの受注も増えつつある。システム更新に合わせ、オフィス環境の改善を提案するなどシナジー(相乗効果)も生まれている。

 8月8日に発令された南海トラフ地震の臨時情報(巨大地震注意)で災害への備えに関心が高まっている。有事の際の指令システムの対応訓練など防災への取り組みも強化していきたい。

 後半戦もDXのニーズは続くとみている。一つの業種で積み上げた成果を徐々に横展開して、さまざまな業界業種に対応できる企業に成長させていきたい。

 今年度は、2022年度からスタートした中期経営計画「Shift up 2024」の最終年度。DXや次世代ネットワークの実装をはじめ、自社実践のノウハウを展開し継続的に顧客の価値創造を図るリカーリング(継続型)モデルの構築に取り組んできた現中計の成果を踏まえ、次期中計の立案に取り組んでいる。

 社長に就任して約2カ月。世の中を良くするためにわれわれが努力すべきところはたくさんあると感じている。そのためには、自分自身がトランスフォーメーション(変革)しなければいけない。次期中計はそうした思いを形にして盛り込んでいきたい。

NECネッツエスアイ本社4階に掲示されている書=東京都港区

 本社4階には書道家が揮毫(きごう)した「Transformation 変革、進化」の書を掲示している。活字のパワーで温度感を伝え、変革に向けた第一歩を踏み出していきたい。