2025.01.01 【家電総合特集】デジタルAV’25展望 ホームシアター/サウンドバー

立体音響を楽しめる環境が身近になっており注目度は高い

サウドバーが充実しテレビとセットで提案する動きもサウドバーが充実しテレビとセットで提案する動きも

立体音響対応が増加

体感など売り場での提案が鍵

 テレビの大画面化が進み、大迫力での映像が楽しめるようになってきた。映像に負けない音響を求める声もあり、テレビのスピーカーシステムでは再現できない音質を実現する簡易型の後付けスピーカーシステム「サウンドバー」が充実するとともにホームシアターシステムも入門機から本格システムまでそろってきている。2025年、メーカーと流通が一体となってテレビとのセット提案や、テレビの音響システムからのステップアップとしてホームシアターを提案することで新たな音の世界の魅力を伝えていきたいところだ。

 テレビの音響はここ数年、映画館と同じような音を家庭でも楽しめる立体音響が主流になっており、高精細4Kテレビの上位機には標準搭載のスピーカーシステムで実現できる機能が付いている。サウンドバーも立体音響に対応するモデルが増えてきており、本格的なホームシアターへのステップアップとしても注目されている。

 ホームシアターはこれまでドルビーデジタルによる前方左右2スピーカー、前方中央スピーカー、斜め後方左右2スピーカーに低音のウーハーを組み合わせた5.1チャンネルが主流だったが、最近は天井からも音が降り注ぎ、まるでその場にいるかのような没入感のある立体音響の提案が本格化している。

 立体音響で主流なのがドルビーラボラトリーズのシネマ音響「ドルビーアトモス」だ。映像などに合わせて音を映画館内で移動させるため、現実と同じ空間にいるような音が体感できる。アトモスは多くのハリウッド制作スタジオに採用され、最近はアトモスに対応した映画タイトルも一気に増えてきている。同様に米DTSのマルチチャンネルオーディオ技術「DTS:X」もあり、対応する機器も増えている。ソニーは360度の包み込まれる音響として360リアリティオーディオを展開し製品などを充実させている。

 立体音響に対応したコンテンツが増えてきている背景から、テレビメーカー各社は最新のテレビのスピーカーシステムを立体音響対応にしてきた。デジタル処理技術の進展もあり、これまでもホームシアター機能を展開してきたが、ここ数年のモデルはディスプレー上に天井方向に音を出すスピーカーを付け、本格的な立体音響を実現できる機種を発売するメーカーもある。

 もちろんテレビ搭載のスピーカーシステムでも十分に高音質で迫力のある立体音響が楽しめるが、外部スピーカーやアンプによるシステムには到底かなわない。

 ある音響メーカー関係者は「サウンドバーやホームシアターシステムを接続するとテレビのスピーカーとは全然違う音が出せる」と話す。また、本格的な立体音響を搭載しているテレビは大半が最上位機になるため、どのテレビでも高音質になっているわけではないことも忘れてはいけないだろう。

 そこでテレビの機種などに依存せずに立体音響が楽しめるのがサウンドバーだ。テレビの前に置く棒状のスピーカーで、デジタル処理で立体音響が楽しめる。重低音のウーハー付きやリアスピーカーが付いたモデルもある。立体音響などに対応しないテレビでも映画館のような音が体感できるため、テレビとのセット提案などにも最適だ。

 サウンドバーは音響メーカー各社が製品を投入するだけでなくテレビメーカーもサウンドバーを発売している。薄型壁掛けテレビを訴求しているLGエレクトロニクスジャパンは壁掛けができるサウンドバーを発売している。TVS REGZAもサウンドバーを発売し、テレビと連携させることでレグザの音をさらに良くできるとみる。ソニーもサウンドバーやホームシアターシステムを充実させている。

 サウンドバーは一人暮らしなどをしている人にとっては便利な機能も多い。サウンドバーはテレビの音だけでなく、ブルートゥースにつなぐことでスマートフォンの音を出すスピーカーにもなる。新たにスマホ視聴用のスピーカーを買わなくてもサウンドバー一つで、テレビのホームシアターとしてもオーディオのスピーカーとしても利用できる。市場価格で数万円のモデルが多いため、テレビ購入時に同時にサウンドバーを提案していくことが販売につながりそうだ。

 ホームシアターは入門機から本格的なシステムまで幅が広く普通の家庭でも手軽にホームシアターを楽しめることが認知されていないことも課題だ。「若者層では映画館のような音を自宅で実現できることを知らない人も多い」(業界関係者)という声もある。

 こうした層にホームシアターの良さをいかに伝えられるかも拡販の鍵を握りそうで、売り場での提案などに工夫が求められる。昨年開催した国内最大級のオーディオとホームシアターの祭典となる「OTOTEN2024」(主催=日本オーディオ協会)では、立体音響関連のセミナーや実演が多かった。若者層でも立体音響を実際に体感している姿も見られた。

 店頭でも立体音響を体感できる場を多くつくり出すことで来店者に対して良さを訴求できるようになる。立体音響のコンテンツが増えていることも合わせて提案し、認知を高めていくことが今年のポイントになる。