2025.01.01 【家電総合特集】デジタルAV’25展望 オーディオ

良い音を聞く機会を増やすことが課題で試聴イベントを強化する動きも

愛好家の需要に支えられる

若年層など裾野拡大が課題

 2025年のHi-Fiオーディオ市場は、オーディオ愛好家らの需要に支えられ底堅く推移しそうだ。オーディオ愛好家の音への追求は天井知らずで、オーディオ各社の新製品を待つファン層も多い。

 オーディオ関連のイベントの来場者も堅調で、オーディオメーカー各社は高音質化に向けた技術開発でしのぎを削っている。この流れは今年も続くが、半面で若者層など新たなファン層の獲得には課題もあり、愛好家の裾野を広げていくことも各社の命題になってきている。

 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、23年の国内のオーディオ関連機器市場は前年比2.9%減の706億円となった。24年11月までは同7.2%減で推移している。市場全体は減少しているものの、Hi-Fiオーディオ各社の動きをみると需要は堅調で、高級モデルの販売も順調に伸ばしているところが目立つ。

 現在のオーディオ市場は、多様化する音源への対応が求められ、これまでのCDやSACD(スーパーオーディオCD)といった記録メディアからアナログレコード、インターネット経由でのストリーミングまで幅広い。CDよりも高音質なハイレゾリューション(ハイレゾ)音源が拡大していることもあり手軽に高音質な音が楽しめる環境はできつつある。

 ハイレゾは業界全体で拡大に取り組んでいる。日本オーディオ協会が取りまとめているハイレゾ規格対応の製品も増え、良い音を楽しむための機器が一目で分かるようにしてきた。ハイレゾ対応機器は、スピーカーをはじめアンプやプレーヤー、ヘッドホンなど拡大しており、主要オーディオ各社もハイレゾ対応のロゴを取得して店頭でのアピールをしている。

 ここ数年はCDなどとは違い、原音に忠実な音の再現ができるアナログレコードも注目され、市場は拡大してきている。原音の情報量のままの再生ができるハイレゾの拡大でアナログレコードが再び注目されており、試聴会やイベントでもレコード再生を中心にしたプログラムを組むところも多い。

 Hi-Fiオーディオ市場は安定しているものの愛好家らの高齢化も課題になっている。一定数の若い層が入ってきているものの裾野を広げていかなければ市場は縮小してしまう。コロナ禍も明け、全国でオーディオの試聴イベントなども始まっている。今年は6月に「OTOTEN」、秋に「インターナショナルオーディオショウ」が予定されている。オーディオショップでの店頭試聴イベントなども予定されている。

 業界関係者の多くは「Hi-Fiオーディオの入り口は、試聴体験をするきっかけをつくることだ」と口をそろえる。「子ども時代に良い音に触れる機会をつくることが重要だ」という声もある。

 今年もまず良い音を聴くきっかけになる試聴イベントを増やしていくことが業界にとっては重要で、若者層に向けては金銭的な余裕が出たときに趣味になるような導きができるかどうかが裾野を広げる鍵を握っている。