2025.01.03 【家電流通総合特集】 ヤマダHD 「くらしまるごと」戦略の総仕上げ  山田昇代表取締役会長兼社長CEOに聞く

ライフセレクト店が軌道に乗る 

大型ショッピング施設と連携 高い集客力に着目

 2024年度中期経営計画は、コロナ禍後の需要の低迷や店舗開発の遅れなどの影響などから見直す必要が出ていたことを踏まえ、中計最終年度中に29年度までの5カ年中期経営計画を発表することを決めた。

 前中計では、家電やリフォームを中心としたデンキ、新築などの住建、住宅ローンなどの金融、リユースなどの環境の各セグメントの事業を有機的に連携させ私たちの生活全体をより良くする「くらしまるごと」戦略を掲げてきた。結果は数値目標に対し乖離(かいり)はあったものの、掲げてきた各事業施策は着実に成果になっており間違っていないとみている。時間はかかったが確かな手応えを感じており、新中計では「くらしまるごと」戦略の総仕上げを掲げた。

 「くらしまるごと」を実現する核となるのが21年から出店を始めた新コンセプトの「LIFE SELECT(ライフセレクト)」だ。ライフセレクト店は、家電から家具・インテリア、リフォーム、住宅、おもちゃに至るまで生活に関わることが全てかなえられる店舗で、当社の知見が全て入っている。売り場面積も3000~4000坪クラスで広域から集客ができることが大きな特長だ。

 ライフセレクトの出店が計画通りに進めば掲げてきた「くらしまるごと」戦略の数値目標は確実に達成できるとみている。これまで新規出店や既存店の改装、拡張などで出店を続けてきたが、実際、前中計では、今までにない難しい大規模出店に取り組んだこともあり当初のもくろみどおりにいかなかったことも事実だ。しかしこの5年でようやく認知も高まり出店ができるようになってきた。23年4月には創業の地に「テックライフセレクト前橋吉岡店」をオープンし、併設した住宅展示場も開設している。

 さらに24年は「テックライフセレクト湘南平塚店」をオープン。平塚はホームセンターのスーパービバホームとスーパーのエイビイが入るショッピング施設「アークスクエア湘南平塚」内に出店したもので、大型商業施設と連携した出店になる。11月末にオープンした「テックライフセレクト高岡店」は大型商業施設「イオンモール高岡」に隣接している。両店ともライフセレクトの最新のコンセプトを盛り込んだ店づくりで、ここをみれば当社の考えている店舗の在り方が分かるはずだ。

 ここにきて大型ショッピング施設と連携する動きが出てきているのはライフセレクト店の集客力に着目しているからだと感じている。現在、スクラップアンドビルドと新規出店とを商圏などに応じて対応してきているが、通常店舗よりも集客力が高く、これまでほかの商圏に流れていたお客が集まる傾向もある。こうした動きが、昨今の大型ショッピング施設と連携した出店につながってきていると感じている。

 ライフセレクトは24年度中に36店舗まで出店し、29年度には80店舗まで拡大していく。合わせて、29年度には店舗敷地内に住宅展示場を設置する店舗を50店舗まで増やすとともにライフセレクト店内に「住まいの相談カウンター」の設置店舗を増やしていく。

 ライフセレクト店と環境セグメントで取り組むリユース事業とのつながりも出てきている。リユース事業強化に向けて設備投資も進めているが、新品と信頼性の高いリユース品を同じ店内で確認できるようにもなってきた。こうした新たな商品提案ができることも集客につながっている。

SPA/PBを強化、ネットと融合も

 当社は23年に創業50周年を迎え今年度は自社オリジナルブランド商品(SPA商品)の開発も強化してきている。現在はSPA商品に加え、PB(プライベートブランド)商品の開発にも力を入れ、OEM(相手先ブランドによる生産)商品の拡大にも力を入れている。従来は隙間を縫った商品開発などを進めてきたが、今後、家電は国内主要メーカーのPB商品をさらに増やしたいと考えている。

 家具やインテリアは大塚家具のブランドを生かし、中高級商品を拡充してきた。ヤマダに来ると手の届く質の高い家具があると思ってもらえる店づくりと商品構成にしてきた。実際に来店客からの評判も良い。

 店舗とネットを融合した展開もさらに進めていく。web.com店を倉庫店舗へ転換しEC(電子商取引)分野での集客をさらに強化するほか、テレビショッピングは家具・インテリア、リフォームといった他社にない商品の提案にシフトしている。

 今後は住宅の提案も始める予定で、当社にしかできない訴求をしていく計画だ。

 構造改革を進めてきた住建セグメントは、ようやく収益体質への見通しが見えてきた。ヤマダホームズやヒノキヤグループ、ハウステックといった各事業会社の体制が整ってきており、今後はスマートハウスの開発や販売をさらに進めていく。ライフセレクト店との連携がさらに重要になり、EV(電気自動車)やV2H(電気自動車と住宅との連携)も訴求していく。

 海外事業は現在、東南アジアを中心に30店舗で展開しているが、インドネシアでの本格展開に向けて準備が整いつつある。

 インドネシアはこれから大きく成長する市場で、流通はかつての日本と同じような形になっている。

 当社が国内で培ってきたサプライチェーンの構築ノウハウをインドネシアでも生かせる。ようやく整備のめどが立ってきているため今年中には本格的に立ち上げていき海外事業は5年で1000億円体制にしたい。

 新中計は29年度に売上高2兆2000億円、経常利益1000億円を目指す。これまで進めてきた施策を実行できれば必ず達成できる計画だとみており、ライフセレクト店の展開を軸に進めていく。