2025.01.03 【家電流通総合特集】 我が社・団体の戦略 東芝コンシューママーケティング 鈴木新吾社長
鈴木 社長
営業・マーケティング連携強化
店頭の体感型提案充実
少子高齢化で国内の家電市場全体が大きく伸びない中、2024年も年初は市場見通しを厳しく見積もっていたが、猛暑などでエアコンが堅調に動くとともに冷蔵庫や洗濯機などの大型商品も販売単価が上がり、台数ベースでは厳しかったものの金額では前年をわずかに上回ってきている。当社はエアコン、冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、掃除機、炊飯器の主要6商品の販促を強化しているが、大型商品を中心にシェアを回復できた一年だった。
24年は東芝の白物家電ブランド発信を強化する目的で、親会社の東芝ライフスタイルのブランドアンバサダーに俳優の反町隆史さんを起用した。19年から掲げている「タイセツを、カタチに。」というブランドステートメントと東芝のカラーの赤を使ったレッドスクエアを結び付け、東芝の白物家電で暮らしを豊かにしていくことを伝える新たなコミュニケーション活動も本格的に始めた。
同時にこれまで個別に動いていたマーケティングや広告、営業活動などを横串で連動するようにした。昨年は販促支援の一環で、土日を中心に全国で「一斉店頭応援日」を展開した。全国の主要量販店約300店の店頭で「東芝フェア」を行うもので、単にフェアをするのではなく、事前の商談やフェアに合わせた広告とCM展開、チラシの配布などを連動させた。6月から本格的に始め、昨年は計5回実施した。フェアに合わせて各部門が横連携して取り組んだのは初めてで一定の成果が得られた。こうした取り組みはさらに継続して進めていきたいと思っている。
数年来取り組んできた顧客体験価値の向上もさらに進めた。当社の販売する白物家電は長年の技術力を生かし他社にない特長のある商品も多い。実際に使っていただいた方には良さを理解してもらい評価されているが、機能の説明だけで伝わらないことも多い。
そこで実際に独自の機能を体感できるように店頭で訴求できる実演装置を用意した。昨年は当社洗濯機のウルトラファインバブル洗浄の良さを伝えるために、ウルトラファインバブルの洗浄効果を実際に確認できる装置を全国に100台規模で用意。店頭での実演は非常に評判が良い。
さらに縦形洗濯乾燥機や全自動洗濯機で好評の「おしゃれ着コース」を実演できるカットモデルも用意した。2本のシャワーで押し洗いできる機能で、衣類の傷みを抑えてしっかり洗えるのが特長だ。実際に押し洗いを見えるようにすることで良さを実感してもらえるようにした。昨年発売したダストステーション搭載のコードレスクリーナーも内部構造が分かるスケルトンモデルを用意して、実際に内部をみられるようにして店頭での実演に生かしている。
体感型の提案を強化するために当社の営業全員が調理の実演ができるようにしているほか、商品説明力を強化したいと考えている。機能の説明だけでなく、生活の課題をどのように解決できるかなども説明し提案できるようにしていきたい。購入することでどのように便利になるかを説明できれば、消費者側も商品の価値を理解しやすくなるだろう。
東芝ストアーとの連携も一層強化していく。残念ながら店舗数は減少しているものの販売金額は前年と比べても伸びてきている。最近はSNSを活用した情報発信やコミュニケーションを取り入れている店も増え、新規客の獲得につながっているところもある。昨年発売した8キログラムの中型のドラム式洗濯乾燥機は当初の想定顧客層と異なり、東芝ストアーからの発注が非常に多く高齢者層から高く評価されたことが分かった。東芝ストアーがあるからこそ分かったことで、引き続き連携を強化していきたい。
体験型の新商品研修会「東芝体感勉強会(MST)」もさらに内容を充実させる。24年春は仙台、東京、高崎、名古屋、大阪、福岡の6会場で、秋は北海道、東京、名古屋、大阪、福岡の5会場で実施。秋には東芝ライフスタイルが主催した12年ぶりのコミュニケーションイベント「レッドスクエア・コミュニケーション・ブランニュー・エクシビション」を東京と大阪で開催した。東芝の家電の歴史や1号機を発売してきた歴史、技術や開発の裏側も展示。併設した体感勉強会ではプロの販売士による実演も取り入れ、実際の販売に役立てるようにした。MSTは今後もさらに充実させ販売の役に立てるようにしていく。
25年の市場も24年と同様の流れになるとみている。店頭とEC(電子商取引)の二極化は進むが、リアル店舗では店頭で商品価値を体感してもらう提案が重要になってくる。1日からマーケティング強化のため、営業やマーケティング、品質機能などを集約した。これにより顧客の声を直接拾いスピード感をもって商品開発へフィードバックするとともに営業活動も一体でできるようになった。引き続き反町さんをアンバサダーにブランド発信と販促、営業を一体で取り組んでいきたい。