2025.01.03 【家電流通総合特集】我が社・団体の戦略 パナソニックマーケティングジャパン 堤篤樹社長
堤 社長
専門店専用商品を企画・投入
デジタル技術で販売支援を行う
国内の家電需要が大きく伸びない中、2023年度は多様化する消費ニーズに合った価値の高い商品展開が十分にできず苦戦を強いられた。
そうした中、パナソニックグループはグローバル標準コストと呼ぶ、部材コストを抑えながら品質の高い商品開発に取り組み、24年度からはお客さまのニーズに合った商品を投入できるようになってきた。
24年度は、量販店、専門店、ダイレクト(直販)の三つの販売チャンネルに合わせた施策を打ち、各チャンネルでシェア拡大していくことに取り組んでいる。23年度からチャンネル別販売体制からエリア別販売体制へ組織変更し、これまで量販店や専門店といった縦割りの販売体制を地域ごとに販売支援するようにした。現在は幅広い商品知識を生かした販売支援と地域に密着した支援を両立できるようになってきている。
地域密着の取り組みの一環では自治体との連携も本格的に進めている。各都道府県の特産物を、調理家電で調理し提案したり、警察や消防と連携して防犯の啓発活動をドアホンなどの商品と合わせて提案したりもしている。各自治体の省エネ補助金の活用支援にも取り組む。引き続き自治体とのコミュニケーションを密に図り販売活動を支援していきたい。
24年度は競争力のある商品展開ができつつある。少子高齢化が進み家庭環境が変化する中、少数世帯に合わせた商品展開も重要になってきた。これまでは大容量で高機能な商品を上位機として訴求してきたが、中小型で高性能な商品展開を始めた。ドラム式洗濯乾燥機では新たにコンパクトモデルのSDシリーズを発売。発表後から注目され予約も好調だった。冷蔵庫では300リットルクラスでありながら上質な商品を発売した。
コードレススティック掃除機も新たな提案を始めた。水を超微粒子のミスト状にした「マイクロミスト」を噴霧してごみを付着させ床の細かいごみまで吸い取れるモデルを発売し販売も好調だ。
理美容家電も当社の特徴が出せている。ナノケア史上最高の速乾性と美しく髪を仕上げるヘアドライヤー最上位機「ナノケア・アルティメイト」をはじめ、電動シェーバー「ラムダッシュPRO6枚刃」も評判がいい。持ち運びしやすい新しいシェーバー「ラムダッシュ パームイン」は女性から男性へのプレゼントとして選んでもらえる商品になってきた。
防犯の観点から新たに監視カメラも投入する。パナソニックグループの技術ノウハウを生かしたもので、これまでのテレビドアホンに加え新たな価値が提供できるとみている。
20年度から始めた指定価格制度などの「新販売スキーム」も着実に浸透してきている。23年度は構成比が38%まで伸び量販店からも評価を得られてきている。特に理美容や調理家電など強みを発揮できる商品は構成比が5割を超えてきている。このスキームを成功させるには①差別化でき競争力のある商品②適切な価格③商品価値を伝える現場力--の三つがそろうことが必要だ。
24年度は競争力のある商品が出せるようになってきたため現場の営業力を生かしながらさらに構成比を高めていきたい。
25年の市場環境も買い替え需要が中心になるため売り上げ拡大とシェア拡大に取り組んでいく。チャンネル別の販売施策をさらに強化する計画だ。
専門店に向けては、専門店専用の商品を新たに企画し投入する。14年に50代、60代の〝目利き世代〟に向けた新コンセプト家電「Jコンセプト」を展開してきたが、現在は洗濯機と掃除機のみになっている。
核家族化が進む、これからの時代にあった商品がさらに必要になってくることから、専門店の顧客層に販売しやすい商品を25年度に発売する。
デジタル技術による販売支援ツールを活用した取り組みも強化する。顧客との接点を増やすツールの提供やLINEを活用した情報発信なども支援していく。訪問宅の家電を写真撮影するだけでメーカーや製造年などが分かるツールの試験運用も始めた。
電器店経営を学び事業拡大につなげられる研修「新プロショップ道場(仮)」も始める。かつて行っていたパナソニックショップの発展に向け経営を学ぶ「プロショップ道場」の最新版で、DX(デジタルトランスフォーメーション)などを取り入れた研修プログラムを組んでいる。若手経営者や2世、3世、従業員も含め学ぶ機会をつくり専門店の発展につなげていきたい。
まだ規模は小さいがダイレクトはパナソニックにとっての重要な接点になるとみており、直販サイト「パナソニックストアプラス」を活用した展開を拡充していく。パナソニックから直接購入したいというお客さまに向けて商品紹介のページから直接購入につなげられる導線もつくっている。
パナソニックビューティやビストロ、デジタルカメラ「ルミックス」などは直販に適した商品カテゴリー。量販店や専門店とは違う接点を求める層に届けられるメニューを検討していく。