2025.01.09 【電子部品総合特集】部品メーカートップに聞く 2025年の経営戦略 アルプスアルパイン 泉英男代表取締役社長CEO

泉 社長

次期中計で成長投資を増加

 2024年度はポートフォリオ改革にかなりスピードを上げて取り組んでいる。コスト構造改革は、上期は計画に対し達成率103%と順調に進捗(しんちょく)した。一方、高付加価値製品の受注は着実に増加しており、その多くがデジタルキャビン関連の製品。歩留まり改善や原価低減も順調に進み、24年は車載事業のポートフォリオ転換にめどを立てることのできた一年になった。

 25年の市場全体のトレンドは、自動車向けはグローバル全体ではやや厳しさが続くと考えているが、コンポーネント事業は中国モバイル市場でのシェア拡大で伸ばしたい。

 25年4月から3カ年の第3次中期経営計画をスタートする。次期中計では成長投資の比重を増やす方針。次世代の高感度磁気センサーの立ち上げ投資などに充当する予定で、一部は前倒しして今下期から始める。

 戦略投資として生産拠点整備も加速。省人化や無人化、強靭化(きょうじんか)への取り組みや、生産拠点集約を推進する。その一環として、いわき地区への車載関連事業集約、宮城地区への電子部品事業集約などを計画。これらの生産機能強化と生産拠点集約整備に今後3年半で400億円を投じる。特に次期中計の前半に集中投資する方針だ。

 高感度磁気センサーは26年に立ち上げ、27年には本格量産を開始する予定。当社は6インチ薄膜ウエハーによる生産を行っているが、8インチへの移行を前倒しで実施したい。

 これまで投資が分散していた面があり、コア事業に集中させていく必要がある。このため、24年度はアルプス物流株式の売却、パワーインダクター事業の台湾デルタグループへの譲渡を発表した。それらで得られた資金を成長投資に充当する。

 アライアンスに関しては、デジタルキャビンをキーワードに国内外のさまざまな企業との協業を進めた結果、デジタルキャビンソリューション実現への布陣が固まりめどが立ってきた。今後はさらにセンサー関連での協業の幅を広げたい。電子部品の事業でも、技術の融合により、新製品が生まれやすい環境づくりに努める。

 生成AI(人工知能)関連では、データセンター用光通信レンズの販売が大きく増加しており、設備投資も決定した。第2世代ミリ波センサーも量産化への最終段階に来ている。今後も市場でのアドバンテージを発揮できる製品のラインアップを増やす。