2025.08.23 子ども版ビジネススクールに熱視線 不確実な時代を生き抜く力を伝授

授業をする谷藤氏 この日はJavaスクリプトを使ってゲームを作っている

プログラミング授業の様子 手が汚れないお菓子は持ち込みOKプログラミング授業の様子 手が汚れないお菓子は持ち込みOK

大人向けのプログラミング教室で使われているボード 「ここは技術を身に着ける場であって詰込み型の勉強をする場所ではない」という意味を込めている大人向けのプログラミング教室で使われているボード 「ここは技術を身に着ける場であって詰込み型の勉強をする場所ではない」という意味を込めている

 学校で教えない社会の知識を伝授する子ども版ビジネススクールに注目が集まっている。C60(シーロクマル、東京都千代田区)の「子ども社会塾」で、プログラミングやコミュニケーションなど実社会に役立つ多彩なスキルを身に付けられる。同社代表取締役で塾長の谷藤賢一氏を取材し、社会塾に込めた思いを聞いた。
  ◇   ◇
 「プログラミング」「社会・人間関係の仕組み」「お金の仕組み」――。同社は小学3年生~高校3年生を対象に、多彩なテーマの授業を週1回のペースで開いている。舞台は、同千代田区の秋葉原教室と茨城県つくば市に構える自由ケ丘、竹園の2教室だ。

プログラミングに挑む機会

 政府が小学生から高校生まで「情報教育」を学べる環境を整える中で、子ども社会塾ではプログラミング教育一つとっても独自の工夫を散りばめた。子ども向け言語ではなく、ウェブサイトやシステムの開発に必要なプログラミング言語の「Javaスクリプト」などを採用。大人の言語に挑む機会を用意したのだ。

 7月の授業をのぞくと、興味津々でプログラミングを学ぶ子どもたちの姿が目に飛び込んできた。受講者は谷藤氏の指示に従ってコードを書く作業に挑戦。その後、好きにコードを書き変える「改造」の時間に移行した。

 プログラミングをはじめとする各授業には、「それぞれの業界で革新を起こしコアになる人材に育ってほしい」という谷藤氏の熱い思いが込められている。授業を通じ、自分の芯で生きていくための基礎を身に付けしてほしいという。

イノベーションの担い手育成

 谷藤氏が標榜するのは、1980年代の教育方法だ。直接答えを教えるのではなく、「一度やってみて」と背中を押す手法だ。子どもたちが間違ったことを言っていても、頭ごなしに否定するのでなく耳を傾ける。

 谷藤氏はIT業界の黎明期から見つめてきた元システムエンジニアで、人材ビジネスにも長年携わってきた。こうした豊富な経験をベースに2018年に開校したのが、子ども社会塾だ。

 戦後80年の産業史を振り返ると、革新的な製品を次々と世に送り出し、日本経済を支えた。谷藤氏はイノベーションを起こした先人に触れながら、「彼らのような人材を育てたい」と意欲を示した。

 さらに「何も光るものを持っていない子どもはいない」とも強調。子どもたちと雑談する中で、各人が秘める才能を伝え興味を引き出すことを心掛けているという。

 地政学リスクの高まりとAI(人工知能)の進化などを背景に世界情勢の不透明感が増す中、不確実な時代を生き抜く力が求められるようになっている。それだけに、「自分で考えて学ぶ力」を養う民間スクールの役割も増す方向にある。

 「日本をまともな国にしてほしい」という思いを子どもたちに託す谷藤氏。国民が希望を持てる日本を実現するためにも、子ども社会塾を通じて次代の担い手に寄り添い続けたい考えだ。