2025.10.01 パナソニック 害獣忌避剤噴霧システム開発、実証実験開始 27年度には製品化

「害獣忌避剤噴霧システム」のシステム構成

 パナソニック環境エンジニアリング(東京都港区、小野勝社長)は、天然ヒトデの臭い成分を用いた濃縮液忌避剤「強臭力」を自動で噴霧する「害獣忌避剤噴霧システム」を開発した。9月25日から、福島県矢吹町の山に隣接した農地に設置し、忌避効果の実証実験も始めた。実験は2025年度末まで行い、27年度中の商品化を目指す。

 農作物の害獣被害が深刻化する中、実用性に優れた害獣対策のニーズが強まっている。今回開発した噴霧システムは、忌避剤をタンクに貯め、センサーによって害獣の接近を検知し、自動で忌避剤を噴霧する。

 忌避剤の追加といったメンテナンス頻度を減らし、天候など外部環境からの影響による効果の減少を防ぐ。噴霧システムがクラウドと連携することで、遠隔からの監視や操作も可能。通行者が噴霧を一時停止できるスイッチボックスも設置し、登山道や農道など人の通行がある場所での安全性にも配慮した。

 忌避剤には、吉田水産が製造する、北海道根室のホタテ漁で混獲後に廃棄される天然ヒトデの強い臭気成分を抽出した濃縮液忌避剤「強臭力」を使用。

 害獣の忌避効果についての実証実験は福島県矢吹町の山間部にある農地で始まっている。実験には、矢吹町と、福島県県南地域の産業グループ「チームやぶき」が協力する。

 複合的な効果を検証するため、電源が不要で設置も容易な、東洋アルミ二ウムが開発した防獣ロープ(強臭力をポリエチレン樹脂に練り込んだもの)も設置している。

 システムではシカ、イノシシ、サルなどの野生動物への効果を確認する。同社によると大型獣であるクマへの効果はないという。

 農林水産省によると23年度のシカ、イノシシ、サルなどによる農作物被害額は年間164億円。農業経営に深刻な影響を及ぼしている。

 電気柵や威嚇資材、薬剤散布なども行われているが、設置や維持に手間がかかるうえ、環境への影響も懸念され、より簡単で実用性に優れた対策が求められている。

 同社では畜産や園芸など農業に関する事業に携わってきた経験を生かし、害獣を捕殺せず忌避させる対応ができないか考えた結果、システムの開発をスタートさせた。同社としては新規事業創出の一つとなる。

 これまで臭いを利用した忌避剤は、プラスチック容器などに封入してつるすことで臭気を拡散させ、害獣の接近を抑制する手法として活用されてきたが、雨水や紫外線の影響により忌避効果の持続性が課題だった。今回開発したシステムは、環境負荷の低減と農業支援を両立するこれまでにない新たな害獣対策として、地域と連携しながら早期の社会実装を目指す。