2025.11.11 NTTと東芝、約300km離れた生産設備の高速制御に成功 IOWN APNとクラウド型PLCを融合、製造業DXへ新段階

 NTTと東芝は、NTTが進める光技術による次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」構想の中核技術であるオール・フォトニクス・ネットワーク(APN)と、東芝のクラウド型PLC「Meister Controller Cloud PLCパッケージ typeN1」を活用し、約300km離れた拠点から生産設備を制御周期20ms以内で遠隔操作する実験に成功した。製造業界で初の成果で、同時に人工知能(AI)による外観検査でもローカル環境と同水準の処理時間を達成した。

 今回の共同実験では、NTTの武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)に模擬生産ラインを設置し、光ファイバードラムを介して遠隔地のクラウドPLC(制御装置)と接続。20msの制御周期を維持したまま装置を稼働させることに成功した。NTTドコモソリューションズの画像認識AI「Deeptector」とRDMAアクセラレーション技術を組み合わせ、4fps(1フレームあたり250ms)」の外観検査処理を実現した。

 実証により、クラウド環境でも従来のローカルPLCと同等の制御性能を確保できることが示された。クラウド上で設定変更やメンテナンスを行えるため、現地作業の削減や複数工場にまたがる生産ラインの統合管理が可能になる。NTTのIOWNプロダクトデザインセンタコンピューティングPF推進プロジェクトの村上祐介担当課長は「今回の成果は工場DXに向けた重要なステップだ」と強調。その上で「PLCの設定情報をクラウド上でメンテナンス可能にすることで、生産ラインの新設や設定変更が現地作業なしに行えるようになり、派遣工数を削減できる。さらに、複数工場をまたいだ生産性向上や品質の標準化にもつながる」と語った。

 低遅延でゆらぎの少ない通信を実現するNTTのAPNと、転送性能を維持したまま中長距離通信を可能にするRDMA(リモートダイレクトメモリアクセス)アクセラレーション技術、ここに東芝のクラウド型PLC技術を組み合わせたのが今回の技術の特徴。両社は今後、2027年度以降のサービス実用化を目指し、故障予兆AIなど高度な演算処理のクラウド化も進める方針。

 今回の技術は「R&Dフォーラム2025」(11月19~26日、NTT武蔵野研究開発センタ)と「IIFES2025」(11月19~21日、東京ビッグサイト東芝ブース)で実演展示される予定。