2025.11.14 NTT、ドライブレコーダーで高精度な位置推定技術を確立 社会インフラ点検DXを加速、紙台帳に代わる高精度デジタル化に道筋
NTTは、ドライブレコーダーなど車載カメラで撮影した画像から、電柱や標識、街路樹など社会インフラ設備の位置を高精度に特定する新たな技術を確立した。GPS(全地球測位システム)の誤差による位置ずれを補正し、正確な設備位置をデジタル台帳に反映できるのが特長である。従来の紙台帳に代わる高精度なデジタル管理手法として、点検業務の効率化とコスト削減を目指す。
背景には、作業員不足や老朽化設備の増加により、維持管理業務の負担が増している現状がある。AIの活用で画像からの劣化検出は進んできたが、GPSには一般的に1~10m程度の誤差があり、画像と正確な設備位置を紐づけることが難しかった。新技術はこの課題を克服し、画像内の設備位置を数十センチ単位で特定できる精度を実現した。

技術のポイントは、ドライブレコーダー画像から「3次元再構成技術」を用いて3Dデータを生成し、あらかじめ用意した高精度な「参照3Dデータ」と重ね合わせる点にある。これにより、従来の1枚ごとの画像解析では難しかった風景特徴の少ない環境でも、広い範囲の特徴を手掛かりに自己位置を推定できる。
NTTアクセスサービスシステム研究所シビルシステムプロジェクトの石井梓主任研究員は「一連のドライブレコーダー画像から点検3Dデータを生成し、高精度な参照3Dデータと照合することで、カメラ位置と画像内のインフラ設備位置を高精度に特定できる。風景特徴が乏しい場所でも安定した位置推定を可能にした」と説明する。

検証実験では、風景特徴が少ない道路環境を想定し、公開データセット「NCLT」を用いて検証した。GPS誤差を模擬したノイズ(位置0~10m、回転±50度)を与えた条件で100回の評価を実施した結果、位置誤差中央値0.11m、回転誤差1.28度という高精度で参照データへの重ね合わせに成功した。
NTTは今後、国内道路シーンでの追加検証を進め、NTTグループが展開するドライブレコーダ点検・デジタル台帳作成ソリューションへの実用化を図る方針である。石井主任研究員は「高精度3Dデータは、官公庁が推進する3D都市モデル、防災対策、自動運転やドローン航路設計などにも応用できる。安全・安心でスマートなまちづくりに貢献したい」と展望を述べた。










