2025.11.17 【EdgeTech+特集】東芝情報システム 耐量子コンピューター暗号を提供開始 情報機器、社会インフラ向けに

従来のRSAなどは2030年ごろに安全性が失われる可能性がある

 東芝情報システムは、量子コンピューター時代に対応した次世代暗号化技術「耐量子コンピュータ暗号(Post−Quantum Cryptography〈PQC〉)」のラムバス社製セキュリティー製品である「Quantum Safe Crypto Library」の提供を開始した。

 極めて計算速度が速い量子コンピューターの登場で、既存の公開鍵暗号方式のRSA暗号や楕円(だえん)曲線暗号は、より短期間で突破される恐れが高まっており、今後、データや通信の秘匿が困難になる。米国標準技術研究所(NIST)では、RSAなどの電子署名アルゴリズムや鍵交換アルゴリズムは、2030年以降は非推奨、35年以降は禁止の方針を打ち出している。

 PQCは、量子コンピューターによる高速通信でも解読が困難な数学的問題(格子ベース、ハッシュベースなど)を基盤とした公開鍵暗号方式。NISTやアメリカ国家安全保障局(NSA)は、PQCへの移行を推奨している。

 対応アルゴリズムは、NISTが標準化した暗号方式を含めたML-KEM(鍵交換アルゴリズム)、ML-DSA(署名アルゴリズム)、LMS/XMSS(RFC準拠のハッシュベース署名)に対応している。今後、SLH-DSA(署名アルゴリズム)、FN-Falcon(同)も機能追加する予定。

 通信路の暗号化でPQC対応を行う場合、PQCに対応した通信プロトコルソフトウエアとの統合が必要になる。安全な通信プロトコルとしては、主にリモートワークの際のVPN(仮想私設網)などで使用されるIPsec、Webサーバーなどとの通信で使用されるTLSの二つが代表的。IPsecに関しては、別途提供されるQuantum Safe IPsec Toolkitと組み合わせることにより、PQCの対応が可能になる。

 また、NISTが定めるセキュリティー基準であり、米政府機関の情報通信機器の調達要件となっているFIPS-140-3も25年末までに認証申請の予定だ。

 今後、情報機器、社会インフラ向けに販売を強化していく。

 EdgeTech+2025では、PQCのほか、Auracast、自己位置推定/SLAMソリューションなども紹介する。