2026.02.03 量子リテラシー標準を策定・公開 検定導入や人材裾野拡大へ本格展開

  量子技術による新産業創出を目指す量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)と教育・コンサルティングを手がけるスキルアップNeXtは3日、量子技術を専門としないデジタル人材を含む幅広い層を対象に、基礎知識を体系化した「量子リテラシー標準(QSS-L)ver.1.0」を策定し公開した。専門人材に限らず、企画や運用など非エンジニア層を含む幅広いデジタル人材を対象に、量子技術の理解と社会実装を後押しする。今後は教育プログラムとの連携や検定試験の導入を進め、量子人材の裾野拡大を本格化させる方針。


 Q-STARは2021年に企業主導で設立され、量子コンピューターに加え、量子通信、量子マテリアル、計測技術など量子技術全体を対象に産業創出を進めている。現在は大企業からスタートアップ、大学まで152法人が参加し、研究開発連携、人材育成、標準化、政策提言を通じて量子産業の基盤づくりに取り組んでいる。2030年に向け、量子技術が生活や産業の中で自然に使われる社会の実現を目指している。


 今回の量子リテラシー標準は、内閣府が実施する府省横断型の研究開発推進プログラム「BRIDGE事業」の量子人材育成施策の一環として策定された。産業界では、量子に関する共通言語の不足や、専門人材に偏った教育体系、大学教育と企業ニーズのギャップが課題となっており、産学共通の学習基盤整備が急務となっている。


 量子リテラシー標準は既存のデジタルリテラシー標準と連携し、「なぜ量子技術が必要か」を示すWhy、「量子技術とは何か」を示すWhat、「社会実装の進展」を扱うHow、さらに技術と向き合う姿勢を示すMind/Stanceの4軸で構成した。各項目に小項目、学習項目例、学習到達度、活用シーンを明確化し、企業研修や教育カリキュラムにそのまま活用できるようにした。


 到達レベルは量子スキル標準のレベル1に位置付け、量子技術の重要性を理解し基礎知識を有する段階を目標とする。量子ビットや重ね合わせ、量子もつれといった基本概念を概念レベルで理解し、産業応用や社会的影響を判断・説明できる力の習得を想定する。


 記者会見では、今後の教育展開や評価制度についても言及。既に量子人材育成プログラムは一部で取り組みを開始しており、今後は量子リテラシー標準との対応関係を整理し、既存の教育プログラムと連携を図るという。受講すれば標準のどの項目をカバーできるかを明確にし、産業界での活用を促進する。


 また、量子リテラシー標準の習得度を確認する検定試験の導入も進める。スキルアップNeXt、Q-STAR、九州大学の3者で開発を進めており、対象はリテラシー標準に対応するレベル1とする。2026年度中にQ-STAR会員企業向けに試行し、フィードバックを踏まえて改良した上で、2027年度ごろに一般向け提供を目指す。


 一方、より高度な専門人材向けには「量子プロフェッショナル標準(QSS-P)」の策定を進める。2026年度中の公開を予定する。量子技術の開発や実装を担う人材を対象に、レベル2から4までのスキル体系を整備する。


 標準の対象はエンジニアにとどまらず、企画、営業、運用などの非エンジニア層、高校生・大学生、教育関係者、メディア関係者まで幅広い。特に企業の非エンジニア層が量子技術を正しく理解し、自社の課題解決に取り込む企画を担う人材となることを重視する。


 政府が掲げる「2030年までに量子人材1000万人」という目標については、専門家だけでなく量子技術を活用する人材を含む概念と捉えており、本標準が数百万人規模のリテラシー層の裾野を支える基盤となることを目指す。


 量子リテラシー標準は今回が初版であり、技術進展や産業動向に合わせて定期的に更新していく方針。Q-STARとスキルアップNeXtは、産業界や教育機関との連携を強化し、量子時代を支える人材育成を本格化させたい考え。