2026.02.20 阪大・理研など、自由電子レーザーの発振に成功 高エネ加速器の卓上化に一歩

研究開発のメンバー。(左から)量子科学技術研究開発機構の中新信彦関西光量子科学研究所主幹研究員、大阪大学産業科学研究所の細貝知直教授、同研究所の佐野雄二特任教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所研究員の山本樹名誉教授。

レーザー航跡場加速の仕組み。電子がプラズマ波で加速され、従来の1000倍以上の電場を生むレーザー航跡場加速の仕組み。電子がプラズマ波で加速され、従来の1000倍以上の電場を生む

 大阪大学、理化学研究所、量子科学技術研究開発機構、高エネルギー加速器研究機構の研究グループは、レーザー航跡場加速(LWFA)で生成した電子ビームを用い、極端紫外線(XUV)領域での自由電子レーザー(FEL)の発振に成功した。高エネ加速器を備える大型施設に限られる先端研究が、卓上規模の小型装置で実現する道を切り開く成果となる。

 LWFAは、高強度レーザーをガスに照射してプラズマを生成し、その中に形成される「レーザー航跡場」と呼ばれる強力な電場を利用して電子を加速する新しい加速器技術。

 レーザー航跡場が生み出す加速電場は従来の加速器の1000倍以上と大きく、数十〜数百m規模の高エネ電子加速器を数cm〜数mmの領域まで飛躍的に小型化できる。

 今回の成果は、加速長が数mmのLWFA による電子ビームを用いて、XUV(波長27〜50 nm)領域でFELの発振(光の強度増幅)を実証したもの。研究開始から25年以上の歳月をかけて得た成果だという。

 大型施設でしか実現できなかった短波長のFEL を、卓上サイズへと小型化できる可能性を広げる成果となる。LWFAが実用レベルに近い高品質な高エネルギー電子ビーム加速器へ到達しつつあることを示す成果でもある。

 今回実証したXUV領域でのFEL発振は、波長が10nm以下の X線領域のレーザー光であるX線自由電子レーザー(XFEL)へと発展させていく上で、最初に達成すべき重要な成果でもある。

 今後は、この技術を基盤に高エネルギー化を進めて小型 XFELを実現すれば、大型施設に限られていた先端研究が多くの機関で日常的に行えるようになる。

 XFELは、フェムト秒(1000兆分の1秒)という極めて短いパルスで、太陽の100億倍に相当する超高輝度のコヒーレントX線を発生させる強力な光源。原子・分子の構造変化を動画のように捉えることができ、原子配列の観察や次世代半導体材料の微細構造解析、化学反応や生命分子の超高速ダイナミクス計測など、幅広い分野で新たな研究展開が期待されている。さらに国家的プロジェクトで進める高エネルギー加速器の建設コストの大幅な削減のほか、がん治療などの医療分野への貢献にもつながる。

 ただ、XFELの発振には高エネルギーで高品質の電子ビームが不可欠で、これまでは数百m規模の高エネ加速器を備えた大型施設が必要だった。そこで注目されているのが、高強度レーザーでプラズマを生成し、その内部の電場で電子を加速するLWFAとなる。

 LWFAは加速器を大幅に小型化できる可能性を持つ一方、プラズマの制御が難しく、発生する電子ビームの品質にばらつきが大きいため、FELやXFELの発振に必要な安定したビームの生成には至っていなかった。

 研究グループは今回、レーザーパルスの波面乱れを抑え、プラズマ源となる超音速ガスジェット標的の安定性を向上させることで、電子ビーム発生点の揺らぎを大幅に低減。電子ビームの安定性と単色性を改善した。さらに、内部整流構造を精密に制御する超音速ガスノズルを開発し、FEL発振に必要な品質と安定性を確保した。

 こうして得られた高品質のLWFA電子ビームを、実証用に開発した2m級のアンジュレータに通過させた結果、XUV(波長27〜50㎚)領域で放射光の強度が自発光の最大約20倍に増幅されることを確認した。

 今回用いられたアンジュレータは、通常の永久磁石方式に加え、磁石間の強い吸引力を相殺する反発磁石を組み合わせ、小型かつ軽量化を実現した。FEL発生部の大幅な小型化に成功し、小型FELシステムの実現可能性を示した。

 大阪大学産業科学研究所の細貝知直教授(理学博士)は「LWFA は高品質電子ビームの安定生成が難しく、長く実用化には遠いと評されてきた。今回、レーザー、プラズマ標的、電子ビーム制御の技術を着実に改良し、LWFA電子ビームの安定性と品質を大きく高めたことで、XUV領域でのFEL増幅に成功し、LWFAは基礎研究段階からエンジニアリングの段階に進んだ」と話した。