2020.07.10 【5Gがくる】<4>「ミリ波」は新たな武器となるのか?(前)
織田信長が『天下布武』という志を成し得たのは「鉄砲」という新たな武器を持っていたから--。この話は、多くの歴史小説でも語られている。
仮に、「ローカル5G」が社会を変えるならば、5G時代における戦国時代の鉄砲に匹敵するような新たな武器は何だろうか?
それは〝超高速(eMBB)〟を導く「ミリ波」といえるだろう。ここでいう「ミリ波」とは俗称で、厳密にはマイクロ波よりさらに高い周波数の30ギガ-300ギガヘルツ帯を指すが、一般的にマイクロ波の中にある「準ミリ波(波長がミリ単位)」を含む、10ギガ-100ギガヘルツ帯のことを呼んでいる。
扱いにくい周波数
いずれにせよ、この辺りの周波数は「扱いにくい」という理由から、今まで利用されていなかった。そのミリ波のうち「28ギガヘルツ帯」が昨年、5Gに割り当てられた。
具体的には、27ギガ-28・2ギガヘルツと29.1ギガ-29.5ギガヘルツが、それぞれ400メガヘルツ幅ずつ楽天モバイル、NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー電話、ソフトバンクの「5G携帯電話(パブリック5G)」に、28.2ギガ-28.3ギガヘルツの100メガヘルツ幅が「ローカル5G」に割り当てられた。
前回の「高い周波数を利用するほどアンテナ(電波を受信できる面積)が小さく、かつ最大通信速度を上げられる」という電波の性質に従って、ミリ波の特徴を見てみよう。
まず、基地局を設置する場所や利用開始までの工事や調整の期間を左右するのが、アンテナの伝搬特性だ。アンテナが小さければそれだけ基地局を小型化できるものの、半面で、電波の伝搬損失が大きくなってしまう課題がある。
つまり送信された電波の多くが的から外れ受信できない状態になってしまうのだ。
そこで、対策としてアンテナの数を増やして指向性の高い鋭いビーム(電波)をつくり、小さなアンテナに向けて発射する「ビームフォーミング」と呼ぶ技術を活用して電波の伝搬損失を補っていく。
幸い28ギガヘルツの場合、1/2波長である5ミリメートルがアンテナ長となるため、アンテナを長い棒状から弁当箱状の平面にできる。その箱の中に格子状にアンテナ素子を配列すれば、面積当たりのアンテナ素子数を大幅に増やすことができる。
自由度を大きく
つまり、ミリ波を使うことにより小型軽量で指向性の鋭いアンテナがつくれ、かつビーム状の電波によって他の無線回線との電波干渉を軽減できるようになる。この特徴を活用すれば、基地局の設置場所の自由度が大きくなり、利用開始までの時間を一挙に短縮することが可能だ。
これは、ローカル5G事業を始めるに当たっても、大きな武器となる。(つづく)
<筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師 竹井俊文氏>