2020.07.14 世界最大完全人工光型の植物工場稼働省エネ技術やノウハウ活用し効率的栽培、東電EPなど
稼働を始めた植物工場
東京電力グループで電力小売りなどを担う東電エナジーパートナー(EP)が出資する合弁会社が、「完全人工光型」としては世界最大の植物工場を7月から稼働させた。
自然光は利用せず、LED照明だけで植物を栽培するため、グループの省エネ技術などが生産効率化の鍵を握る。フル稼働すれば、レタスなどを1日約5トン生産できる。
「RE100」に加盟するなど環境事業に関心が高い、みずほフィナンシャルグループ系のリース会社、芙蓉総合リース(東京都千代田区)や、植物工場の運営実績がある農業系ベンチャーのファームシップ(東京都中央区)と共同で事業を進める。
東電EPが50%出資する合弁会社「彩菜生活合同会社」(東京都千代田区)を19年4月に設立。このたび静岡県藤枝市に植物工場を開設した。
東電グループでは十数年前から、少ないエネルギーで空気中などから熱を集めて利用するヒートポンプ技術を使い、省エネできるハウス栽培の温度管理を農家に提案するなど、農業分野にかかわりを持ってきた。
加えて、食品工場などに、電力設備の省エネ化や高効率化といったエネルギーソリューションを提供する機会も多かった。こうした経験を生かし、自社でも新たな事業を立ち上げることを決めた。東電グループとしては初めての植物工場となる。
稼働した植物工場は、延べ床面積が約9千平方メートル。自然光を採り入れる窓などがなく、独自技術のLED照明だけで効果的に植物を育てる完全人工光型。原則24時間体制で照明し、外部に開放もせず、天候や異常気象などの影響を受けることはほとんどない。
そのため、温度管理や空調なども合わせて行う必要が生じ、使用するエネルギー量は膨大になる。「省エネのノウハウが重要になってくる」(東電EP広報企画グループ)ことから、効率的なエネルギーマネジメント技術などを東電EP側が支援していく。
生産が軌道に乗った場合、1日当たりレタス約5万株に相当する約5㌧の生産能力を備えている。東電EPによると、国内のレタスの出荷量は年間50万㌧ほどで、うち2%程度が工場産と試算できるという。今後、その割合は伸びると見ている。
関東や中部、関西地域を中心に、弁当や総菜を製造する食品加工工場などへ出荷していく計画だ。販路を拡大して1年後にはフル稼働できる生産体制とする。3年後をメドに黒字化を図り、年間十数億円の売上げを目指す。
現状はレタスに絞って栽培しているが、市場ニーズがある小松菜やホウレンソウといったほかの葉物野菜の栽培についても今後、検討していく。
広報企画グループでは「工場の事業運営を独自に始めたことで、得られたデータや蓄積したノウハウを、別の顧客へのエネルギーソリューション提供に活用することもできる」と期待を寄せる。