2020.10.09 【5Gがくる】<14>コロナで見えてきた5Gによる遠隔教育③

 コロナ禍のオンライン授業は、ニューノーマル時代の「反転学習」に不可欠な遠隔教育の予期せぬ実験場となった。それによって、テレワークと同じ「ネットワーク帯域不足(低速)」が浮き彫りになり、5Gが解決すると前回述べた。

 文部科学省の「GIGAスクール構想」では、19年から希望する全ての学校において校内の高速大容量ネットワーク環境の整備が始まっている。今後、5Gによってさらにネットワークの高速化が加速するとみられるが、学校だけでなく学生宅にも5Gなどによる高速ネットワーク環境の整備が必要であることが見えてきた。それを誰がどのようなビジネスモデルで整備するのか?

 反転学習では学生が主体となりアクティブ・ラーニングが展開される。教師はファシリテーターとなり、課題解決をテーマにした実践的なグループディスカッションやグループワークを促進しながら個々の学生を指導する。最近、この反転学習を社員教育に導入する企業が増えている。

 そこには、米グーグルやアマゾン、フェイスブックといったGAFAや中国のバイドゥ、アリババ、テンセントといったBATなどのプラットフォーマーに負けない、国際競争力のある課題解決型人材が求められている背景があるのではないだろうか。

 いずれにせよ、テレワークを日常化しようとしている企業にとっては、研修をどう実施するかは重要な課題となり、集合教育に代わる「遠隔教育」は避けては通れない。それは、従業員にとっても同じだ。

帯域不足を回避

 在宅勤務では自宅が寺子屋になる。テレワークの合間にオンライン研修を受講するのはもちろんのこと、子どものオンライン授業も支障なく受けさせることが親の務めだ。そのためにはネットワーク帯域を家族全員でうまくシェアする必要があり、ある意味「テレワーク」と「遠隔教育」は一心同体と言っても良いだろう。

 帯域不足を回避するために授業時間とバッティングしない時間帯にオンライン会議を設定したり、会議中に子どものオンラインゲームを禁止したりするのは避けたい。息抜きも必要で、家族の誰もがいつでもどこでも、仕事や勉強、スポーツ観戦、ゲームなどができる超高速ワイヤレスネットワーク環境が望ましい。

ネットワーク帯域を家族でシェア、「テレワーク」と「遠隔教育」

ローカル5G普及で

 逆に言うとエンターテインメントを含めた多様なアプリケーションを利用できるローカル5Gサービスが普及すれば、おのずと遠隔教育の課題も解決するのではないだろうか。

 今、今年末に制度化が予定されている〝サブ6〟とも言われる4.5ギガヘルツ帯を皮切りに、地域BWA(広帯域移動無線アクセス)や集合住宅向けのFWA(固定無線アクセス)によるネット接続サービスの実証実験が始まっている。ローカル5Gならではの新たなビジネスモデルの登場に期待したい。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉