2020.10.20 【CEATEC特集】CEATEC実施協議会 鹿野清エグゼクティブプロデューサーに聞くニューノーマル見据えた新展示会
ソサエティ5.0(超スマート社会)の実現を目指した総合展示会「CEATEC2020」は、21回目を迎えた今年、初の全オンラインで開催する。これまで20年間、千葉・幕張メッセで開催してきたCEATECは、「ニューノーマル(新しい日常)」を見据えた全く新しい展示会に生まれ変わることになる。主催者も出展者も来場者も、全てが初体験となる今回。様々な新しいチャレンジをしているCEATEC実施協議会の鹿野清エグゼクティブプロデューサーに、開催への思いと見どころなどを聞いた。
-新型コロナウイルス感染拡大で環境が一変しました。
鹿野 年初に通常開催を予告したものの、新型コロナにより状況は変わってしまった。当初はオンラインと実際の展示のハイブリッド型も検討したが、他の展示会の動きを見ると軒並み中止や開催延期を決めていた。最後まで会場での開催の可能性を模索してきたが、過去に経験のない状況の中でオンライン開催を決断するに至った。
完全オンラインでの開催に際しては、全く経験していないことだけに、真のオンライン展示会をやる〝覚悟〟も必要で、オンライン開催を〝決断〟するだけでなく、〝実現〟しなければならないという強い思いを持って取り組もうとしている。
-5月にオンライン開催を決断してから実際に開催するまでの期間が非常に短いですね。
鹿野 CEATECの企画運営に携わるようになって4年目だが、全てが未経験の領域になる。一般的に展示会などの企画運営は1-2年かけて行うと思うが、これを3-4カ月で実施しなければならない。幕張メッセでの開催であれば過去20年の運営のノウハウや経験を持っているため様々なリスクを想定しながら対応できる。しかしオンラインは全く経験がないため、全てが手探りだ。
何年も前から、展示会のオンライン化やVR(仮想現実)化、AR(拡張現実)の活用といった構想はあったが、これだけ短期間でオンライン化をするという考えはなかった。
-オンライン開催について業界内外から様々な反応があったと思います。
鹿野 在宅勤務が一気に進み、ビデオ通話やオンライン発表会といったオンラインコミュニケーションに慣れつつあるものの、展示会を全てオンラインで実現することに対しては心配や不安も少なくない。実際、オンライン開催決定後には不安もあったが、出展者と話を進めてみると、全く同じような心境でいるところが多かった。まさに、一緒になって不安や心配事を解決し、課題を乗り越えていきたいという気持ちだ。
-今回はどのようなコンセプトにしていますか。
最新ソリューションを体感
鹿野 「CEATEC-Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC)」をスローガンに掲げた。完全オンラインが目玉で、国際規模の展示会では初めての試みになっている。
ニューノーマル社会について出展者、来場者とともに考えていける会場(サイト)づくりを目指し、ニューノーマルを実現していくソリューションを提案する「ニューノーマルエリア」、デジタル技術を駆使した様々な製品やサービスをそろえる企業が出展する「ジェネラル(企業)エリア」、スタートアップ企業が中心に出展する「コ・クリエーションエリア」の3エリアを用意した。目的に合わせて最新ソリューションを体感できるようにしている。
「リアルタイムコミュニケーション」を打ち出し、オンラインでありながらリアルな会話をできるようにしたいとの思いを組み入れた。今回のオンライン開催に当たってプラットフォームを専用に開発。多くの方が来場しても問題ない容量を確保するとともに、一度ID登録すれば次回以降や関連展示会でも使えるよう統合管理が可能なものとした。
-会場のイメージはいかがですか。
鹿野 コロナ禍になり様々な展示会のやり方が模索されている中、自ら様々なオンライン展示会を見て体感してきた。「CEATECは最先端」というイメージから3DやVRなどを想像する人もいるかもしれないが、実は現在のネットワーク環境などを見ると決してVRなどが良いとは言い切れないことが分かった。そのためCEATECは、没入感や会場を歩く雰囲気に注力するのではなく、ストレスなく展示や提案を見られるように配慮した。
トップページは、幕張メッセに来場した際と同じイメージになるよう工夫するとともに、エリア案内やコンファレンス、現在のイベント情報などが確認できる。そこから見たい展示やブースに入ることもできるほか、検索から直接ブースに行けるようにしている。チャットでのリアルタイムの質問も可能だ。
-出展各社のブースはどのようになっているのでしょうか。
鹿野 今回は、各社が独自にブースサイトを構築するケースのほか、出展の負荷を減らせるよう、事務局側で用意したコンソール(ひな形)に各社が動画やプレゼンテーションなどのコンテンツを置けるようにした。当初は大手企業を中心に独自のサイトを構築するところが多いと想定をしていたが、多くがコンソールを利用してのサイト構築になっているようだ。
-同じコンソールでサイトを作ると似たような見た目になってしまいませんか。
鹿野 意外とそうでもなくて、どのようなコンテンツを置くかによって全くイメージの違うサイトが出来上がっている。これまでの展示会は実際のブースデザインのほか、製品や技術、サービスを打ち出すことが展示のポイントだったが、オンラインでは、製品や技術、サービスなどの自社ソリューションに加えて「演出力」が必要になる。企画と演出力によって見せ方も変わってくると感じている。
-オンラインならではのこだわりはありますか。
来場履歴、リアルタイムで確認
鹿野 来場者は登録してから入場するため、出展者は自社サイトへの来場履歴をリアルタイムで確認でき、来場者はマイページで、自身が回ったブースの履歴を確認できる。従来はバーコードの読み取りで来場確認をしていたが、オンラインになったことでリアルタイムで見られる。
例えば出展者は、どのように来場があり、どの展示を見た人が多いか、といった履歴をリアルタイムで確認できるため、速やかにプッシュ型での提案や案内が行える。また、来場が芳しくない場合などは、会期中であってもコンテンツの入れ替えやサイトの再構築なども可能だ。反応を見ながら展示内容を変更できることもオンラインの強みだろう。
-出展の傾向はいかがですか。
鹿野 今回の出展申し込み数は356社・団体で、46%が新規出展だ。昨年の出展者数約780社・団体からは減ったように感じるかもしれないが、これは共同出展も入れた数であり、申し込み数自体は昨年よりも若干増えている。
ただ、オンライン開催になったことで、実際にモノを見せて提案したい企業などは出展を見合わせるケースもあり、逆にICT関連などのソリューションを訴求する企業はオンラインのメリットを生かせるため出展率が高まった。各社ともニューノーマル社会の課題を解決するソリューション提案になり、展示内容も大きく変わっていると感じる。
-来場者にはどのように体験してもらいたいですか。
鹿野 開催テーマにニューノーマルを挙げているので、まずは「ニューノーマルエリア」を見てもらいたい。地方自治体なども多く出展している。続いて「ジェネラルエリア」で、それぞれの企業が提案する最新のソリューションを体感してもらい、最後に「コ・クリエーションエリア」でスタートアップ企業の新しいソリューションや技術に触れてほしい。オンラインの特徴でもあるライブとアーカイブを組み合わせ、時間を有効に使ってほしいと考えている。
今回はチャットなどのリアルタイムコミュニケーションツールに加え、実際の展示会場では実現できた、ふらっと会場を回ってみるといった体験ができるツール「CEATEC GO」を用意した。出展者が登録している展示チャンネルを対象に、ランダムに見て回ることができるもので、検索やオススメなどでは出会うことのできないぶらり歩きもできるようにしている。ぜひ活用してほしい。
-今後の展望はいかがですか。
鹿野 まずは今回のイベントを成功させることが最重要課題になるが、来年以降の開催概要についても検討を始めている。来年は幕張メッセでの開催をぜひ実現させるとともにオンラインも併用したハイブリッド型の開催を視野に入れている。実際の展示会とオンライン展示会の良さを融合したイベントにできないかと考えており、今回のデータを分析した上でリアルとバーチャルの融合を実現していきたい。