2021.10.19 【CEATEC特集】キーノートスピーチ牧島かれんデジタル相
牧島 デジタル相
温かいデジタル社会へ政策を前進
コロナ禍でデジタルの遅れをさまざまな場面で、皆さんも感じられたのではないか。特に、行政や地方自治体の窓口に行かなければならない。オンラインで申請することはできても完結することができない。そんな声を私たちはたくさん聞いてきた。
20年前にIT基本法が施行され、制度・枠組みやインフラとしては、ITというものがこの社会に実装されてきたが、それを十分に活用してデジタル社会へと形を変えていくところまでは20年の間、十分にできなかった。そんな反省に立って平井(卓也)前大臣からバトンを引き継いだ。
デジタル庁のミッションは「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」というものだ。デジタルで温かさを皆さんに実感してもらいたい。そのために一つ一つの政策を前に進めていきたい。
私たちの社会にはいろいろな課題がある。高齢社会であることや少子化対策にも取り組まなければならないということ、または都心部と地方部に格差があるのではないかという指摘があること。「デジタル田園都市国家構想」によって、どの場所にいてもデジタルの恩恵を受けることができる。メリットを感じることができる。そんな社会にしていきたい。
このデジタル社会をつくるに当たり、デジタル庁の設置法だけではなく、デジタル社会形成基本法もつくられた。そこには国だけでなく、地方自治体においても、そして都会だけではなくどの場所であっても、皆さんの生活の質を上げることができるように、皆さんの安心・安全につながることができるように、デジタルは何ができるかということが問われている。
公共の分野から準公共の分野へとデジタルという技術をさらに広げようとしている。霞が関や地方自治体、行政機関にとどまらず、教育や医療、介護、健康、そして防災・減災・災害対策といった準公共分野のデジタル化をさらに力強く進めていきたいと思う。
特に自然災害が多い日本列島において、デジタルで一人一人の命を守ることができるかどうかという大きな挑戦に向き合わなければならない。教育分野では一人1台のタブレットについて、「GIGAスクール」(構想)を前倒しして実装してきたが、まだまだ課題は残っている。
20日からはマイナンバーカードと健康保険証が一体化される。私もマイナンバーカードを持って医療機関に行き体験した。本人の同意を基に特定健診のデータや薬剤履歴などをドクターに示すことができる。患者を守る医療につながるという話をドクターから聞いた。「私のためのあなたのための(データの)使われ方」という道が見えてくるような気がする。
日本発の概念として「DFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト=信頼性のある自由なデータ流通)」がある。トラスト(信頼)を担保した上でデータを使っていく。その枠組みを日本からグローバルに発信しようとしている。日本ならではの温かいデジタル社会、そして日本だから発信できるトラストのあるDFFT。こうしたことに挑戦していきたい。