2021.12.09 【新領域に挑む】ユナイテッド・プレシジョン・テクノロジーズ(中)-PR-一体型プローブピン シリコン内に大量配置
シリコン内にプローブピンを配列した「MMS」
高度なエッチング技術を武器に、高性能スマートフォン向けVCMスプリングを事業の柱に育て上げたユナイテッド・プレシジョン・テクノロジーズ(UPT)。同社が次に挑むのは、半導体テスト用コネクター市場だ。
生かしたのは、エッチングでワンピース構造にした電気テスト用コンタクトピン(プローブピン)「Union Contact(ユニオン・コンタクト)」。通常3、4点の部品からなるプローブピンをエッチングで1点構造に。それをシリコン内に大量に配列したのが、新開発した「MMS(マイクロ・メタル・ソケット)」になる。
同時に、プラスチック繊維に金属を編み込み、紙のように使える導電性シート「UHSS(ユニオン・ハイスピード・シート)」で、新たな用途提案にも本腰を入れ始めた。製品の詳細について、佐藤勉取締役営業統括本部長に話を聞いた。
ピンごとの荷重 3分の1に抑制
―MMSの特徴は何でしょうか。
佐藤取締役 ワンピース型プローブピン(ユニオン・コンタクト)をシリコン内に配列し、半導体テスト用にソケット化したものだ。従来は樹脂製ハウジングにプローブピンを配列したソケットが使われてきたが、その置き換えを狙っている。
当社は0.3ミリメートルピッチ以下のマイクロサイズのコンタクト領域をターゲットにしてMMSを開発した。0.15ミリメートルの狭ピッチ化まで対応できる。半導体パッケージは、狭ピッチ化とともに多ピン化が進んでおり、数千にも及ぶピンとのコンタクトに対応する必要がある。
そこで課題になっているのが、ピンごとにかかる荷重だ。通常、プローブピンごとにかかる荷重は20~30グラムだが、MMSでは0.1ミリメートル押し込むのにかかる荷重を10グラムにするなど低荷重を実現している。
―MMSだからこそ実現できた性能でしょうか。
佐藤取締役 その通りだ。ユニオン・コンタクトとシリコンの弾性を生かしたハイブリッド型だからこそ可能になったと言える。
定格電流を2.5Aまで流せる大電流への対応に加え、高周波特性も高い。最先端の半導体テストに合った製品だ。
―開発にかけた期間はどれぐらいですか。
2年以上かけて開発
佐藤取締役 MMSは2年以上をかけて開発してきた。半導体テストでは、コネクター精度の問題で、より精密なテストを諦めている顧客もいる。エッチングをベースに、既に持っていた技術を組み合わせることで、技術課題をクリアする部品を実現できたと思っている。
―UHSSもさまざまな用途に生きそうです。
佐藤取締役 UHSSは、プラスチック繊維にエッチング技術を用いて表裏貫通の金属を形成したものだ。シートの厚みは50マイクロメートルで、80マイクロメートルのピッチに対応している。
折り曲げられる柔軟性が最大の特徴だ。それを分かりやすく示すために、UHSSで鶴を折った。もちろん、導通する。フレキシブル基板(FPC)の代わりに使える部品として普及させたい。
半導体パッケージの導通を確認する際、プローブピンとデバイス側の電極が接触することではんだ転写が起こり、プローブピンが汚れて耐久性が落ちることがある。その間にUHSSを挟み込めば、そうした汚れからプローブピンを守ることができる。ここでは、異方性導電シート「プローブピンセーバー」という名称で展開し、UHSSの使い方やアプリケーションをはっきりとさせた提案も行っていく。(つづく)