2022.07.22 福島・大熊町にインキュベーション施設起業家ら約35社入居 原発事故からの復興拠点に

大熊インキュベーションセンターとして生まれ変わった大野小学校でテープカットする吉田町長ら

センター内では、教室がコワーキングスペースとシェアオフィスにリノベーションされているセンター内では、教室がコワーキングスペースとシェアオフィスにリノベーションされている

 東京電力福島第一原発が立地する福島県大熊町で22日、原発事故で廃校になった小学校の校舎を活用して町が整備を進めてきた起業支援拠点「大熊インキュベーションセンター」がオープンした。起業家やベンチャー企業が集う施設としてよみがえらせ、にぎわいを取り戻す拠点にするのが狙いだ。

 大熊町では原発事故後、町の面積の6割が放射線量が高い「帰還困難区域」に指定された。その後、大野小やJR常磐線大野駅の町中心部は、住民の居住を前提に先行して除染が行われる「特定復興再生拠点」に約5年前に認定され、先月30日になって、震災以来11年間続いた避難指示が解除された。

 復興の拠点と位置付けるインキュベーションセンターは、校舎と図書館を改修。本格的な事務所として利用できる貸事務所をはじめ、企業を目指す若者や学生が利用できるコワーキングスペースとシェアオフィスを備える。入居する起業家と地元住民らが自由に出入りできる交流スペースも設けた。

 施設を利用するのは都内企業のほか、福島県内や神戸市などを拠点とする約35社。シェアオフィスを利用する東京都渋谷区のIT企業の社長は「リモートワークが中心のわれわれはどこでも仕事ができるのが強み。福島の地場産業の復興だけでなく、優秀な学生とつながる人材獲得の場としても活用したい」と期待を寄せた。

 開所式で吉田淳町長は「多くの町民の思いが詰まった大野小が、町の基幹産業を創出する拠点として生まれ変わった。町民にもなつかしさを感じてもらえる場になるよう、着実に復興を進めていきたい」と力を込めた。
(詳細は26日付の電波新聞/電波新聞デジタルに掲載します)