2022.09.30 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<104> アジャイルによるDX推進者の早期戦力化⑥

 デジタルトランスフォーメーション(DX)が登場した社会背景として「少子高齢化」があることは繰り返し述べてきた。しかし、それがいつから始まったかといえば--おそらく17年前の2005年だと思う。この年は、筆者にとっても「無線技術者」の育成を始めるターニングポイントとなった年だ。

人口減少社会へ

 内閣府の資料では、05年は出生数よりも死亡数が上回り、人口動態統計が現在の形式で調査を開始した1899年以降、初めて人口の自然減となった。日本が少子高齢化による人口減少社会に突入した年だった。

 2005年といえば、ベビーブーム世代が活躍する高度経済成長期に、建設中の東京タワーが見える下町に住む人々の悲喜こもごもの人生を描いた映画『ALWAYS 三丁目の夕日』が大ヒットした年でもあった。

 また、その前年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が「DX」を初めて提唱したことも、偶然とは思えないような気がする。ある意味、この赤い夕日は「あの頃の日本はよかった」というノスタルジーでもあり、今から思えば「DXによる社会変革」の希望でもあったのだろう。

 さて、当時、民間企業で運営していたIP電話普及推進センタで人材育成を担当していた筆者は、05年8月に同センタ認定技術者資格の「VoIPモバイル(後の無線LANデザイナ)」研修と試験を開始した。

 IP(インターネットプロトコル)電話は、自営網を無線LAN(Wi-Fi)でワイヤレス化し、音声網とWebなどのデータ網とをIPで統合できる。携帯電話一つで内線電話と業務アプリが使えるようにできる技術で、業務プロセスを変革するものとして期待されていた。

 今の時代に置き換えると、自営網をローカル5Gでワイヤレス化し、スマートフォンやIoT機器のデータを活用して業務プロセスを変革することと同じで、DXの原型ともいえるだろう。

技術検定始まる

 時を同じくして、筆者も後に参画することになるモバイルコンピューティング推進コンソーシアムが05年11月に「モバイルシステム技術検定(2級)」を開始している。

 両者のテキストには、当時の技術書としては珍しく、無線技術の基礎からシステム構築、アプリ、ビジネス活用までが網羅されていた。こうした視野の広い「無線技術者」を育成する民間資格が登場したのも、この年だった。

 前回、無線はICTの主役になりつつあると述べたが、この17年間で通信事業者やシステムベンダー、SIer側の育成はうまくいったような気がする。しかし、新たな変革期を迎えている今は、DXの成功に不可欠となるユーザー側の「無線技術者」を育成する必要が出てきている。

 〝DX時代の無線技術者〟は、データサイエンスや人工知能(AI)の技能を持つDX推進者たちとコラボレーション(協働)しながら、アジャイルなDX推進チームを編成、自社の課題解決に有用となるデータを見極めて、柔軟かつスピーディーにワイヤレスIoTやローカル5Gの導入検討をリードしなければならない。(つづく)

 〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉