2023.02.01 【冷蔵庫特集】大容量タイプの構成比が高まる、省エネ性能も年々進化
省エネ性に優れ、食材をおいしく保存できる冷蔵庫に関心が高まる
冷蔵庫は、家庭で食事を取る機会が増えている昨今、食材を新鮮に、おいしく、長期に保存できる機器として、生活になくてはならない必需品だ。大容量化が進む一方、省エネ技術も向上しており、ユーザーニーズに応える商品戦略が活発だ。
冷蔵庫は買い替え需要を中心に全体的には安定した需要がみられる中で、大型冷蔵庫の構成比が高まり、庫内容量が501リットル以上の超大型冷蔵庫も着実に増えている。
冷蔵庫を巡っての市場環境は大きく変化しており、その一つが内食化の浸透だ。コロナ禍で、この傾向がさらに加速し、家庭でおいしい料理を食べたいというニーズが高まっている。
このユーザーのおいしさ志向が冷蔵庫の機能にも変化をもたらし、長期に食材をおいしく保存するための冷蔵・冷凍技術が進化している。
メーカーによって、冷蔵庫は貯蔵庫ではなく調理庫と位置付けるケースもあり、家電のカテゴリーとしては調理家電に入れてもおかしくない機能が搭載されるようになった。
■進化する冷凍技術
冷凍技術においては、業務用並みの急速冷凍技術が搭載される機種もあり、新鮮な肉や魚を長期に、おいしく保存できる機能として、メーカーも積極的にアピールしている。
新鮮な野菜をおいしく保存できる冷蔵技術も進み、とれたての野菜を、いつでも味えるような、保鮮技術の開発が進んでいる。
潤いのある冷気を投入し、野菜を乾燥から守っておいしく保存したり、ビタミンCなど栄養素をアップするほか、UVを使った除菌で清潔に保存するなど、さまざまな鮮度保持技術が盛り込まれている。
■省エネも大きなキーワード
冷蔵庫を巡る環境変化の大きなものでは、昨今の電気代高騰がある。このため24時間通電している冷蔵庫には、省エネ性能が求められる。ランニングコストが気になり、最新の省エネ冷蔵庫に買い替えるユーザーも増えそうだ。
冷蔵庫の省エネ性能は年々進化しており、真空断熱材の多用や高効率な圧縮機・モーターの採用などハード面での技術開発はもとより、センサーと連動してドア開閉の状況に合わせ、最適な制御を図るといった機能も採用されている。
冷蔵庫のIoT化も進んでおり、さらに高度な冷蔵庫の省エネ制御が可能となっている。
クラウド上の人工知能(AI)が、ユーザーの冷蔵庫使用サイクルを分析して、自動で最適な省エネ運転を実現するほか、状況に合わせて外部から庫内温度の調整やモード設定も可能となる。
SDGsへの意識が強まる中、冷蔵庫でも食材廃棄の削減に貢献する機能も進化している。食品ロス量は減少傾向にあるものの、それでも消費者庁のまとめでは国民一人当たり年間約41キログラム(2020年度推計)あるという。
冷蔵庫の庫内にカメラを設置して、庫内にある食材が買い物先からでも分かるようにして、無駄な買い物をなくす、といったものやIoT技術を使った食材管理も実現している。IoT技術で余った食材を有効に活用したレシピ提案を行う機能も登場している。
収納性を高め、見やすく、取り出しやすくすることで、食品ロス抑制につなげるといった地道な提案にも力が入っている。
冷凍技術により、食材を新鮮なまま長期保存できるようにすることは、食品ロス抑制の観点でも貢献する機能といえる。
このほか、災害が多発し、停電対策などレジリエンスが重要視されるようになって、もしもの時に家庭用蓄電池と連携した省電力モードを実現させる機能も登場している。
■市場動向
冷蔵庫は、買い替え需要を中心に、毎年ほぼ安定した需要で推移している。
コロナ禍に見舞われた20年度は、巣ごもり需要の増加でまとめ買いが加速し、前年を上回って推移し、大容量化が進んだ。
21年度は、前年度比95.0%の372万5000台と2年ぶりにマイナスとなったものの、まとめ買いや家庭での食事機会が増えたこともあって、501リットル以上の大容量タイプは前年度を上回った(日本電機工業会=JEMAまとめ)。
22年度に入ってからは、ほぼ横ばいで安定している。4月から12月までの累計では、前年同期比98.4%の274万8000台、金額ベースでは101.9%で推移している。通期では若干前年を割り込みそうな気配だ。401リットル以上の大型冷蔵庫は46.8%と、冷蔵庫全体の半分程度を占めている。