2020.02.19 【ルームエアコン特集】高付加価値品販売で利益重視へ
花粉シーズンに突入。今年は新型肺炎の影響も加わり、エアコンでも空気清浄機能に注目が集まっている
国内のエアコン市場が停滞気味だ。昨年10月以降、消費税増税による需要の反動減に加え、暖冬により暖房機器全体の需要が低迷していることも影響している。
ただ、エアコンは通年商材として提案されるようになって久しい。IoT化も進み、付加価値は高まるばかりだ。売り場でも販売台数を追うのではなく、時間をかけた商談で付加価値品を販売につなげ、利益を重視する姿勢が強まっている。
昨年のエアコン市場は動きの激しい一年だった。需要のピークである夏商戦真っただ中の7月は、天候不順によって需要が大幅に減った。
7月の出荷台数は前年比で3割以上減り、それまで好調だった市場環境に水を差した格好となった。出荷台数の前年割れは18カ月ぶりのことだった。
しかし、8月になると猛暑となり、9月には増税前の駆け込み需要が重なって、市場が反転。4-9月で見ると、結果として過去最高の出荷台数を記録するに至った。
ただ、10月以降は厳しい状況が続く。10-12月は軒並み前年割れの出荷台数となり、増税後の需要停滞が響いている。加えて、今季は暖冬で暖房機器の販売が全体的に伸び悩んでいる状況だ。エアコンも影響を受けており、増税後の反動と暖冬により需要は回復しきっていない。
様々な要因に左右された一年ではあったが、19年1-12月の出荷台数を見ると、前年を上回る高水準を達成。1972年以降の記録では過去最高となった。
今年に入ってからも需要は盛り上がりにかけるものの、これからの季節、花粉も視野に入れた空気清浄機能の訴求も重視したいところだ。
加えて、新型コロナウイルスの感染拡大が、家電でいうと空気清浄機を中心とする空気環境を清潔に保つ機器への関心へとつながっている。エアコンについても空気清浄機能搭載機種への関心が高まりつつある。
各社の空気清浄機能を見てみると、パナソニックの「エオリア」Xシリーズは、カビ菌や花粉など空気中の様々な汚染物質を抑制する「ナノイーX」を搭載。約6畳空間において、約24時間後にはスギやヒノキなど13種の花粉を無力化する能力を持つ。
ダイキン工業は「うるさらX」Rシリーズにエアコン内部のカビを抑制する「ストリーマ内部クリーン」を備える。酸化分解力を持ったプラズマ放電の一種であるストリーマを熱交換器や吹き出し口に照射して抑制。空気清浄フィルタで捕集したカビや花粉などにもストリーマ照射して部屋を清潔に保つことにつなげている。
富士通ゼネラルは「nocria」Xシリーズに電気集じん方式の「プラズマ空清」を搭載し、0.3-2.5マイクロメートルの微粒子を捕集できる。運転停止後には、熱交換器を55度以上に加熱し、除菌する「熱交換器加熱除菌」で室内機の清潔性も保つ。
三菱電機は「霧ヶ峰」FZシリーズに「ピュアミスト」を搭載する。電気を帯びたミストが菌やウイルス、花粉などを抑制して脱臭する。空気中の水分に高電圧をかけて水のミスト(微粒子)を発生させ、このミストが10分以上浮遊することで菌などの活動を抑制する仕組みだ。
シャープは「エアレスト」L-Pシリーズが、8畳空間を5分で清浄する高い空気清浄能力を備える。
吸い込み口全てを覆う集じん脱臭フィルタに加え、空気清浄機と同じ仕組みのシロッコファンを採用。「プラズマクラスターNEXT」で、臭いや菌を消臭・除菌することが可能だ。
コロナは「Wシリーズ」で0.3マイクロメートルの粒子を80%捕集する空気清浄フィルタを搭載。脱臭フィルタも備え、吸着した臭いを触媒効果で分解、脱臭する。これらで室内空間の清潔性を保つことに貢献する。
各社は上位機を中心に、住空間を清潔に保つための付加価値機能を搭載している。売り場で前面に訴求されることは少ないものの、時季によってはこうしたポイントが生きてくるはずだ。
仕掛けづくりへ
さらに今年は東京五輪・パラリンピックの開催年。需要期が開催時期に重なるため、それがどう需要に影響してくるか予測しにくい。特に東京を中心に物流関係の影響は避けられない見込みだ。混乱を避けるためにもメーカー、流通ともに早めの需要刈り取りに取り組む考えで、仕掛けづくりに向けて動きが出始めている。
【ルームエアコン特集】目次
●高付加価値品販売で利益重視へ
●流通動向 夏モノの売り場転換急ぐ 早めの需要刈り取りへ
●パナソニック「エオリア」Xシリーズ 最高濃度「ナノイーX」搭載
●ダイキン工業「うるさらX」 水内部クリーン 結露水で洗浄
●富士通ゼネラル「nocria」Xシリーズ ダブルAIシステム採用
●三菱電機 霧ヶ峰FZシリーズ 各種技術採用で汚れ防止
●シャープ L-Xシリーズ クラウドAIで睡眠に合わせ運転
●コロナ Wシリーズ 年間の快適性追求