2024.01.18 【情報通信総合特集】2024市場技術/トレンド データセンター
ハイパースケール型が本格化
CN対応グリーン化も加速
クラウドサービスの拡大、生成AI(人工知能)の登場などを背景に、国内データセンター(DC)市場は、高い成長が見込まれている。DCの新設、増設も高水準で推移、特にハイパースケール型DCの建設が本格化している。一方、産業界や企業の環境意識の高まりを背景に、カーボンニュートラル(CN)に対応したDCのグリーン化も加速する。
24年投資1.5倍
国内のDCの新設、増設投資は近年、高成長を続けている。IDC Japanの予測によれば、2023年の投資規模は前年比16.4%増の3222億円となる見込み。24年は同1.55倍の5000億円超の大幅な増大を予想する。27年にかけて、毎年5000億円を超える投資規模が継続するとみる。
こうしたDCの投資動向について、IDC Japanは「クラウドサービス向けハイパースケールDCの増設需要が、東京、大阪の郊外で拡大する傾向が継続しているため」と分析する。
IDC Japanによると、国内のDCサービス市場規模は22年に2兆275億円となり、初めて2兆円を超えた。こちらも年2桁の伸長を続け、26年の市場規模は3兆円を上回り、3兆2000億円となる見通しだ。
本格的な「データ利活用時代」を迎え、DCの市場規模は拡大の一途をたどると言える。DCは、自然災害などに対応したBCP(事業継続計画)としての需要に加え、オンライン経済の拡大、企業のDX化、デジタルコンテンツの増大--などを背景にクラウドサービスの需要が急拡大している。
AI登場で需要増
さらに、生成AIの登場が、今後数年間のDC需要のゲームチェンジャーになり、これまでの需要予測を20%ほど押し上げるとの見方もある。
こうした需要動向を背景に、大規模なハイパースケール型DCが求められている。同時に、サイバーテロ対策などセキュリティーの強化、さらにはカーボンニュートラル対応など脱炭素に向けた取り組みも本格化する。
国内のDCの約8割が東京、大阪に集中しているが、今後は地方分散化が本格的に始まる。近年では千葉県、北海道がDCの集積地になっている。DCの地方分散化は電力事情やリスク分散の観点からも必要で、経済産業省もDCの地方分散設置を支援する。
また、パブリッククラウドなどクラウドサービスに対応した大規模ハイパースケール型DCが本格化する一方、エッジコンピューティングに対応したDCも注目される。エッジコンピューティングは通信コストの削減、低遅延処理、セキュリティーなどのメリットから、製造現場をはじめ、さまざまな用途が見込まれる。今後、エッジインフラとして空調、電源などのファシリティーとサーバー、ストレージ、ネットワーク機器を一体化したエッジDC、マイクロDCも普及が期待されている。
さまざまな分野でデータの利活用が本格化し、デジタル社会実現の基盤として、DCの需要拡大が続く中、DC事業各社では、高いコネクトビリティー、カーボンニュートラルに対応したDCの増強を相次いで打ち出している。
富士通は全国各地にDC拠点を構えるが、館林DCを最先端技術と高品質運用とともに、最新のグリーンテクノロジーに対応した国内最高水準のDCと位置付ける。
NECは、100%再生エネルギーを活用した「NEC神奈川DC2期棟」を23年下期に立ち上げ、さらに24年下期に「NEC神戸DC3期棟」を開設する。新DCは国内最高水準の環境性能を実現している。
同社は、企業や政府・自治体のDX加速により、パブリッククラウドの利用が増加していることに対応。NEC印西DCをマルチクラウド、ハイブリッドクラウド対応拠点と位置付ける。
日立製作所は「日立環境イノベーション2025」を踏まえ、DCのグリーンIT化を進めるとともに、モジュールDC、コンテナDCに注力する。
NTTは、中期経営戦略の柱の一つとして、27年までに国内外でDC事業に1兆5000億円を投入する計画だ。NTTデータは電力消費を可視化するシステムを開発、運用を開始した。また、30年までに再生可能エネルギー化を図る。ソフトバンクは、北海道苫小牧市に国内最大級のDCを建設する。24年に着工、26年度の完成を予定する。
米グーグルは昨年、100%再生可能エネルギー使用のDCを千葉県印西市に建設した。同社は日本に1000億円を投資する計画を進めており、DC建設もこの一環。
大手DC事業者のアット東京は、昨年4月からハウジングサービスなどに使用する電力を、実質再生可能エネルギー100%で提供している。
インターネットイニシアティブ(IIJ)は千葉県白井市の「白井DCキャンパス」2期棟の運用を昨年開始した。同社は、松江DC、白井DCでカーボンニュートラルDCリファレンスモデルを提唱。また、白井DC利用者の脱炭素化推進を支援する取り組みとして非化石証書の直接調達を開始し、24年度から商用化に踏み切る。
キヤノンマーケティングジャパンはITサービス強化でDCに注力。新設の西東京DCの2期棟が満床状態のため、3期棟目建設の検討を開始した。