2025.04.21 【眼鏡型機器の最前線㊤】「世界から近視の撲滅を」 製薬会社が先進技術採用グラスの普及を通じて警鐘

レンズの縁に沿って並んでいる8個のマイクロLEDから、レンズ中央付近のマイクロレンズを経由して8面の反射ミラーに光を照射する

正面からみたクボタグラス正面からみたクボタグラス

専用ケースで充電して使う専用ケースで充電して使う

 「近視を撲滅させたい」。窪田製薬ホールディングスの社長兼CEOで眼科医も務める窪田良氏はそんなミッションを掲げ、AR(拡張現実)技術を駆使して遠くの映像を再現する眼鏡型機器「Kubota Glass(クボタグラス)」を開発。その機器の普及活動に国内で取り組みながら、低年齢化が進む近視を矯正するという課題に向き合うよう警鐘を鳴らす。

 一般的な眼鏡などで矯正すれば問題ないという印象を抱く人は多い。ただ、視力矯正の眼鏡などを装着しても変形してしまった網膜や眼球は元に戻らず、白内障や緑内障、網膜剥離といった目の疾患が発生するリスクは高いままだ。

 既に目の角膜を削るレーシック手術や眼鏡による矯正などの手段があるが、対処療法に過ぎない。こうした現状を踏まえて窪田CEOはクボタグラスを開発する意義に触れ、「目の健康を守るためには、近視を根本的に治療することが必要と考えた」と強調した。

 目は、角膜と水晶体と網膜の距離を一定に保ち続けることで、体が成長しても見える状態を維持している。その制御機構が乱された状態が近視で、効果的に改善する取り組みが望まれていた。

 近視になるメカニズムは、室内で近くの物を見た際に網膜の後方に映像が映る頻度が高まると、網膜が後方に伸びて成長するというもの。クボタグラスでは、物を見る仕組みを逆手にとって、映像をわざと手前に映すことで奥に伸びた網膜を引き戻すという仕組みを取り入れた。

 鍵を握る技術の一つが、自然光のような広い波長と明るさを特徴とするマイクロLED(発光ダイオード)で、まぶしさを感じることなく太陽光の下で遠くの景色を見ている状態を視界の中に作り出す。

 具体的には、レンズの縁に沿って等間隔で並んでいる8個のマイクロLEDから、レンズ中央付近に設置されたマイクロレンズを経由して8面の反射ミラーに光を照射する。

 網膜の前に明暗のある映像を写すことで、網膜を手前に引っ張るという。映像は十字状に切れた白っぽい円形で、白と白以外の部分が「明暗」となる。

 晴れた日に空を見上げると、青空と雲の間に「境界線」が現れるため、遠近感を感じ取ることができる。窪田CEOは、「人間が物を見ている時に認識しているのは光の境界線だ」と力説する。

 マイクロLEDによる明暗の映像は、境界線を意図的にぼかし、網膜の手前にピントが合う「近視性のデフォーカス(ボケ)」を作り出す。ピントを合わせようとする網膜の特性を利用するという。窪田CEOは「実際に網膜を動かせたのが僕らの大発見だった」と力を込める。

(つづく)