2025.07.11 【電子部品総合特集】日本航空電子工業 中島伸一郎フェロー商品開発センター長

中島 フェロー

IoTで社会課題解決

フィルム型コネクター研究継続

 日本航空電子工業は、センシングや分析・加工技術を競争力の源泉とし、社会課題解決を責務と捉え、社会課題の市場課題への変換を実現するイノベーターとして、産業創出への貢献を目指した研究開発活動に取り組んでいる。

 中島伸一郎フェロー商品開発センター長は、世界経済の不確実性が増す中、「次代のソーシャルリアリティー創出の中心に、情報(データ)を握る巨大テック企業(ブランドオーナー)が位置し続けることは間違いない」とし、「電子部品製造企業の研究開発活動も、従来以上に日本企業としての意義と価値を考えながら進めていかねばならない。その基軸として経済安全保障的視点を重要視している。一層の戦略的自律性と戦略的不可欠性を考慮した研究開発運営を意識している」と話す。

 戦略的自律性は、己の脆弱(ぜいじゃく)性を解消し、他への依存を減らすこと。戦略的不可欠性は、他が己に頼らざるを得ないことを指す。「これらを各社が意識し、国家レベルの産業改革に展開できれば、大国を含む世界の動向に右往左往しない産業構造に行きつくものと考える」(中島フェロー)。

 同社は、IoT技術による社会課題解決を目指し、新たな電気接続技術構築への探索研究に取り組んでいる。具体的には柔軟性や伸縮性という市場要求に応えるため、独自の材料技術によるフィルム型コネクター(FTC)の研究を継続し、高齢者見守りに貢献するウエア用センサー機器への適用を目指している。FTCは機器内の省スペース化に加え、はんだや接着剤レスによる省資源、省エネルギー化というカーボンニュートラル対策にもつながるとの認識が広がりつつあり、大面積センサーなどでも注目を集めている。

 老朽化インフラなどの社会課題に対し、独自開発した高感度MEMS加速度計を用いたセンサーシステムによる橋梁(きょうりょう)の劣化診断研究も継続している。このほか、産学官連携で独自に開発した水位計システムを山岳エリアに設置し、地滑りセンシングの実証実験を継続している。

 さらに、将来の同社事業を支える超高感度センサーシステムの構築を目指し、科学技術振興機構(JST)の経済安全保障プロジェクトの下、資源探査や自動運転などに貢献する超高感度センサーとそれを利用した次世代航法システム開発を推進した。

 モノづくり面では、EMC解析技術や材料分析技術による製品設計へのフィードバック強化に加え、カーボンニュートラルに向けた材料分析研究も推進する。