2025.07.25 【半導体/エレクトロニクス商社特集】半導体製造装置の動向 日本製装置販売が好調 AI関連がけん引、3年連続で増加見込む
日本製半導体製造装置の活況が続く。2024年に入り、前年同月を上回る販売実績が続き、6月時点で18カ月連続の前年同月超えを達成した。AI(人工知能)関連がけん引しており、販売高予測(需要予測)では3年連続の増加を見込む。先端半導体を進化させてきた微細化で限界がささやかれ、製造コスト増も課題。先端パッケージングでは、日本の強みとされる後工程技術に期待が集まる。
日本半導体製造装置協会(SEAJ)の統計資料によると、日本製半導体製造装置の販売高(輸出含む)は、23年6~12月に前年同月を下回ったが、24年に入って前年同月比増が続く。6月の販売高は前年同月比17.6%増の4405億9200万円を計上。18カ月連続で前年実績を上回り、好調に推移する。
SEAJは毎年1月と7月に半導体製造装置の販売高予測を公表しており、25年度からの3年間で伸長の持続を予想した。
24年度が上振れ
1月時点での予測では、24年度は同20.0%増で着地する見通しだったが、実績では同29.0%増と上振れた。背景にはHBM(広域帯メモリー)の旺盛な需要があり、落ち着くと想定されていた中国向けも高い水準を維持した。
上振れに伴い、25年度の予測は同5.0%増から同2.0%増に引き下げたが、販売高自体は1月時点の予測よりも2000億円程度引き上げている。
販売高は25年度が4兆8634億円(前年度比2.0%増)、26年度が初の5兆円台となる5兆3498億円(同10.0%増)、27年度が5兆5103億円(同3.0%増)と予測した。
3日の会見で、SEAJの河合利樹会長は「ここ数年、AIサーバー系がけん引してきた。車載関係や汎用(はんよう)半導体、中国新興メーカーの投資が若干減少しているが、サーバー向けの先端ロジック、HBM(高帯域幅メモリー)系の投資が伸長し、全体としては若干の増加」と説明した。
半導体市場をけん引してきたスマートフォンやパソコンの本格回復が待たれ、車載が軟調となる中、AI半導体が需要をけん引してきた。半導体メーカー、ファウンドリー(受託生産会社)などAI関連企業の業績は好調で、AI向けデーターセンターへの投資は拡大する見通しだ。
AI半導体は、GPU(画像処理半導体)やFPGA(書き換え可能な集積回路)、ASIC(特定用途半導体)、SoC(システム・オン・チップ)に加え、脳の仕組みをまねたニューラルネットワークの演算処理に最適化されたNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)、TPU(テンソル・プロセッチング・ユニット)などを指す。
HBMは生成AI用GPUのメモリーとして使用され、従来のメモリーよりも高速で広帯域なデータを転送する。TSV(貫通電極)を使用した高密度配線により垂直方向に積層(3D〈3次元〉実装)される。
後工程に脚光
先端半導体は微細化の限界がささやかれ、製造コストの上昇が懸念される中、先端パッケージングに注目が集まる。後工程向けの動きは活発だ。
ヘテロジニアスインテグレーション(異種チップ集積)では、再配線層(RDL)やバンプ(金属突起)の形成のために、基板に回路を描くリソグラフィー工程がある。
キヤノンの半導体露光装置の販売実績は好調に推移する。生成AIに使用されるGPUの需要拡大を背景に後工程向けの引き合いは多く、25年は前年を上回る販売台数を計画する。
ニコンは7月、先端パッケージング向けにデジタル露光装置の受注を開始し、26年度中の上市を見込む。
デジタル露光装置はフォトマスクを使用せずに、回路パターンを表示したSLM(空間光変調器)に光源からの光を照射し、基板に転写する。新製品はL/S(ライン・アンド・スペース、配線の幅と隣り合う配線同士の間隔)が1マイクロメートルと高解像度であり、600ミリメートル角の大型基板に対応する。
3D実装やチップレット化では、CMP(化学機械研磨)プロセスの重要性が高まる。
荏原製作所は昨年12月、熊本工場(熊本県南関町)で新生産棟が完成した。今年6月には藤沢事業所(神奈川県藤沢市)に新開発棟が竣工(しゅんこう)。CMP装置などの開発の迅速化を図る。
チップにダメージを与えずに樹脂封止する技術も重要になる。
TOWAはモールディング装置を手がける。キャビティー(金型)内の樹脂を圧着させ、流動が発生しないコンプレッション(圧縮)装置が強みで高い受注水準を維持する。
半導体後工程向けや部品実装を成長事業と捉え、ヤマハ発動機は1日付でヤマハロボティクス(YRC)を設立した。従来のヤマハロボティクスホールディングスを存続企業とし、その傘下にあった新川(ボンディング装置)、アピックヤマダ(モールディング装置)、PFA(FA装置)を統合して、YRCに改称。半導体後工程向けに一貫したソリューションを提供していく。
日本の半導体製造装置メーカーは後工程に強みを持つ。回路形成の前工程とチップを組み立てる後工程の領域の中間に当たる「中工程」という概念も生まれつつある。国内メーカーは先端パッケージングにより収益機会の拡大を目指す。