2020.09.17 アイロボット、全世界で最大のアップデートAI性能を飛躍的に高め、ピンポイントで掃除

AI性能を飛躍的に高め、ピンポイントの掃除ができる

アイロボットジャパンの挽野社長アイロボットジャパンの挽野社長

 「新しい時代の幕開けだ」。アイロボットジャパンの挽野社長は、アップデートによりルンバとブラーバがもたらす新たな掃除体験を指し、そう表現する。

 これまでロボット掃除機は「全体をくまなく掃除」することに主眼が置かれてきた。ロボットが掃除してくれるのは便利な半面、全体を掃除するには時間がかかる。そこで表面化してきたのが、「早く終わってほしい」というニーズだ。

 ルンバとブラーバは、アイロボット・ジーニアスで、掃除場所を認識できるようになった。もともと搭載していた高度なAIがさらに威力を増し、業界初の物体認識機能を実現したからだ。ソファやテーブル、椅子などの家具を機械学習で自動的に検出し、「ソファの周りを掃除する」といったピンポイントでの掃除を可能にした。

 掃除タイミングも指定できるようになったのも大きい。

 よく使う掃除パターンに名前を付けてアプリに登録すれば、その掃除パターンをいつでも実行できる。例えば「夕食後」とお気に入りに登録し、ダイニングテーブルとキッチンを選択。これをアプリで起動すれば、夕食後に汚れやすいダイニングテーブルの下とキッチンをルンバで掃除、その後、ブラーバで拭き掃除する、といったパターンを実行できる。

 掃除方法もユーザーの好みに合わせられる。AIが日々学習を行うことで、ルンバが停止しやすい配線が多い場所などを自動で検知し、進入禁止エリアへの指定をAIが提案してくれる。花粉やアレルギーなど、季節に応じた掃除方法を提案してくれるのもありがたい。

 これらは専用アプリ「iRobot HOOME」で簡単に設定・操作できる。掃除の場所、タイミング、方法をパーソナライズできるのが、アイロボット・ジーニアスで進化したルンバとブラーバの最大の魅力だ。

 この利便性を最大限享受するには、ルンバの「s9シリーズ」「iシリーズ」と「ブラーバ ジェットm6」というそれぞれの上位機種が必要だ。しかし、IoT対応しているルンバ「900シリーズ」や「eシリーズ」「600シリーズ」でも、掃除スケジュールや季節に応じた掃除提案など進化した一部の機能を使えるようになる。

 今回のアップデートで、掃除の中心にロボット掃除機が躍り出るきっかけになりそうだ。

 米アイロボット社は、同社史上最大のソフトウエアアップデート「iRobotGenius(アイロボット・ジーニアス)ホームインテリジェンス」を、8月25日に全世界のユーザーを対象に実行した。ロボット掃除機「ルンバ」や、床拭きロボット「ブラーバ」に搭載するAI(人工知能)の性能を飛躍的に高め、家庭やユーザーごとに異なる掃除事情に合わせて、〝パーソナライズ〟できるようにした。進化したAIのキーワードは、「Where(掃除場所)」「When(掃除タイミング)」「How(掃除方法)」の三つだ。 

アイロボットジャパン 挽野社長に製品・拡販戦略を聞く

 現在、ルンバの普及率は7%弱。23年末までに10%の普及を目指す中、アイロボット・ジーニアスがもたらすベネフィットはその原動力となり得るか-。アイロボットジャパンの挽野社長に聞いた。

  -ユーザーにとっての最大のメリットは何でしょうか。

 挽野社長 簡単に言うと、これまでスティック掃除機で人がやっていたピンポイントの掃除をロボットがやってくれるようになることだ。AIが学習し、学習した結果をアプリで実行できる。物体を認識できるようになったことで、部分清掃が可能になった。

 -ロボット掃除機が掃除シーンの中心的存在になりますか。

 挽野社長 これから変わっていく。コロナ禍により在宅時間が増えたことで、掃除に対する考え方も変化しつつある。例えば、ジーニアスでは掃除スケジュールを提案してくれる。将来的には外出時など、人の動きに合わせてロボットが掃除を行うなど、暮らしをさらに豊かにする掃除の提案につなげられると考えている。

 -販売店側にはどのようなメリットがありますか。

ルンバやブラーバ、ジーニアスの機能訴求

 挽野社長 家電量販店では現在、「iRobotブランドブース」を5店舗で展開している。家の中のイメージを持ってもらえる空間づくりを重視し、ジーニアスによる進化も想定した売り場を作り込んだ。販売スタッフの声も盛り込み、これまで以上にルンバを提案しやすくしている。

 ジーニアスの機能を分かりやすく伝える場となっており、お客さまからも好評。上位機種の販売にもつながりやすくなっている。販売側にとっても部分清掃などジーニアスで進化した機能は訴求しやすいポイントになっている。

 -ジーニアスの利便性を最大限受けるには、コスト面のハードルが高いように感じます。

 挽野社長 サブスクリプションサービスを用意しているのは、コスト的なハードルを解消するためだ。試しに使ってもらい、気に入ったら購入してもらうため。

 6月からは2週間のお試しプランも始めた。申し込みは上位機種が多く、販売にもプラスに働いている。

 -他機器との連携も進める方向ですね。

 挽野社長 アイロボットが目指すスマートホームは、ロボット掃除機だけでなく、家庭内のIoT機器との連携を実現することだ。人が帰宅した瞬間、操作することなく鍵が開き、照明がつく。そういうシームレスなスマートホームの世界を理想としている。

 そこでは、ルンバやブラーバが備えるマッピング機能が生きる。IoT機器につながることで、それが住空間全体の価値になる。

 他機器との連携は、試験的に既に始まっており、今後に期待してほしい。

 -ジーニアスは今後も3カ月ごとにアップデートする計画です。どのように進化していきますか。

 挽野社長 掃除の場所、タイミング、方法という三つのポイントでアップデートされていく。今回は上位機種を中心とした機能強化だったが、今後は下位機種の強化につながるアップデートを行っていく計画だ。