2020.10.21 CEATEC2020ONLINE開幕ニューノーマル社会へ共創

顔認証技術を活用したNEC本社ビルの入退場ゲート

 あらゆるモノがつながるIoTの総合展示会「CEATEC 2020 ONLINE(第21回)」(主催=CEATEC実施協議会)が20日に開幕した。初のオンライン開催となった今年は国内外から356社/団体が出展。日本を代表する電機メーカーや電子部品メーカー、情報通信関連企業などが結集し、「ニューノーマル社会」に向けた最新の製品やソリューション、サービスをオンライン上の会場(Webサイト)で披露している。会期は23日まで。その後、アーカイブ開催も実施する。

 今年の開催スローガンは「CEATEC-Toward Society5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC)」。

 20日のオープニングセレモニーで、石塚茂樹CEATEC実施協議会会長(ソニー副会長)は「社会の在り方や価値観、行動様式が変わりつつある中、今年はニューノーマル社会と共に歩むCEATECを掲げた。多くの出展者がニューノーマル社会への提案を行い、出展者同士、出展者と来場者がオンラインで新たに出会い、共創を促すことを目指す」とあいさつ。

 経団連の山西健一郎副会長(三菱電機特別顧問)は「長らく変わることのなかった日本の社会システムが、コロナを契機に大きく変革する兆しが見えつつある。Society5.0の実現をテーマにしてきたCEATECでニューノーマル社会への提案の議論が交わされることは非常に大きな意義がある」と述べた。

 Generalエリアには総合電機や電子部品、情報通信関連を中心に多くの企業が出展し、ニューノーマル社会/Society5.0の実現に向けた製品やソリューションを紹介している。

 イノベーションによって社会に信頼をもたらす思いを込めたテーマ「Trust(信頼)」を掲げたのは富士通。ニューノーマル市場を先取りする取り組みや顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を後押しするソリューションに焦点を合わせる。

 身近な変革を巡っては、自社で実践した働き方に関するノウハウや独自技術を駆使した「Work Life Shift(ワーク・ライフ・シフト)」を紹介。17種類のソリューションを体系化した。

 6年ぶりに出展した東芝も新時代の市場を占う取り組みを一堂に集めた。熱視線を注ぐ重点市場の一つが精密医療だ。健康診断データから向こう5年間の疾病リスクを予測するAI(人工知能)のほか、わずかな血液から短時間で13種類のがんを検知する「マイクロRNA検出技術」などを訴求している。

 共通IDを活用した生体認証の可能性を追求するのがNECで、富山市から受託して今月始めた顔認証システムの社会実験などを取り上げている。事前にスマートフォンで登録した顔画像などの情報を個人の識別に生かし、地元の複数店舗で顔認証決済やサイネージ(電子看板)によるおもてなしサービスなどを体験できるようにする試みだ。

 日立製作所は、カレンダーと設備機器連携によるスマート会議を参考出品。ソニーは「3R Challenges」をテーマに、ニューノーマル社会に3Rテクノロジー(リアリティ/リアルタイム/リモート)で感動と安心を届ける取り組みを紹介している。シャープの「透明ディスプレイパーティション」は高透過で発光せず、ソーシャルディスタンス確保に「楽しい、便利」という価値を付加する。

 電子部品関連では、CASEや第5世代高速通信規格5G、スマートファクトリーなどの分野に重点が置かれ、「非接触」「遠隔通信」に関わる技術紹介も目立つ。

 アルプスアルパインは非接触ながら直感的に操作できる「タッチレス操作パネル」、TDKは開発中のピエゾ環境発電デバイス「InWheelSense」、村田製作所は熱によって残響が少なく広帯域な音波を発生させることができる「非振動型広帯域超音波発生デバイス」などを披露した。

 京セラは未来のコンセプトカー「Moeye(モアイ)」を出展。光学迷彩技術でコックピットの一部を透明化し、人の視覚・触覚・聴覚・嗅覚を楽しませる独自デバイスを多数搭載している。

Generalエリアの展示ブース(京セラ)

 タイコエレクトロニクスジャパンは、ニューノーマル社会への接続ソリューションを解説し、CTOのセミナーなども充実させている。ロームは白物家電の待機電力極小化に貢献する業界初のゼロクロス検知ICを出品している。

注目のスタートアップが集結

 スタートアップ企業が出展するCo-Creation PARKでは、日本貿易振興機構(JETRO)が海外のスタートアップを集め、「モビリティ」「ヘルステック」「スマートシティ」のカテゴリに分けて注目企業を紹介。 同時に、情報通信研究機構(NICT)が毎年開催するスタートアップ向けビジネスコンテスト「起業家万博」に出場した実績を持つ企業のビジネスマッチングにも取り組んでいる。

NICTの「起業家万博」画面

 スタートアップ支援プログラム「J-Startup」の対象企業も出展している。

 出展社で目立つのが、AIやIoT技術を生かした製造工程の自動化や設備管理の支援をはじめ、自動車関連や医療関連の課題を解決するシステムの提案だ。

 医療関連では昨年のCEATECアワードで「Co-Creation PARK賞」を受賞したコネクテッド・インダストリーズ(東京都中央区)の病児保育支援システム「あずかるこちゃん」など、実力派も出展している。

オープン直後は入場制限

20日午後1時時点でサーバー増強

 完全オンライン開催となったCEATEC2020は、20日のサイトオープン直後に入場登録者のアクセスが集中してサーバー負荷が上がり、入場を制限する事態になった。サーバーの増強など対策を講じ、20日午後1時時点で入場は問題なくできるようになっているが、CEATEC実施協議会では「会場を問題なく閲覧できるよう細心の注意を払っていく」としている。

 展示会は全来場者が入場登録をして閲覧する。ID登録により訪問履歴を確認できるなど便利な半面、システム上は個々のID管理が必要となる。今回、ID管理をする入場登録サーバーと展示会サイトを運用するサーバーを連携させて来場者のサイト内での動きを管理するようにしていた。

 問題が発生したのは入場登録用のサーバー。会期中に20万人の来場を想定してシステムを構築していたが、サイトオープンの20日午前10時以降、入場登録サーバー側に想定の2倍のアクセスがあり入場登録できなくなった。サイトにログインできた人も会場内を閲覧する際に入場登録サーバーとのやりとりが必要になるため、サイト内回遊が困難になったと見られる。

 20日午後1時までに入場登録サーバーの増強を終えた。一方、オンライン会場のサーバーには現状は余裕があるという。「今後、トラブルの詳細を分析して再発防止に努める」(同)。