2020.12.16 メタンハイドレート開発の行方商業化に向け重要フェーズ、フォーラム開催
次世代燃料のメタンハイドレート(メタハイ)について開発研究の現状を紹介するフォーラムが16日、オンラインであった。研究を進める共同事業体「MH21-S研究開発コンソーシアム」(MH21-S)が主催。国が掲げる商業化に向けて、技術的課題などを研究者らが紹介した。解決策を検証するため、米国アラスカで陸上産出試験の準備を進めている。
メタハイ開発計画は、基礎的研究を進める「フェーズ1」(01-08年度)、近海での産出試験を行う「フェーズ2」(09-15年度)、商業化に向け技術整備をする「フェーズ3」(16-18年度)の3段階を経て、民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指す「フェーズ4」(19-22年度)が進行中だ。
フェーズ4では、これまでの石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と産業技術総合研究所(AIST)に、新たに民間の日本メタンハイドレート調査が加わった3者で「MH21-S」を構成し、経産省から委託を受ける形で開発計画を継続している。
海底の砂層に広がる「砂層型」を中心に技術開発を進め、日本が13年3月に、愛知・三重県沖で世界初となる海洋での産出を成功させるなどの成果を上げた。だが一方で、産出量が伸び悩むなど商業化に向けては課題が山積しているのが実情だ。商業化の目標である「平成30年代後半」(23-27年度)を前に、重要なフェーズに入っている。
経済性の基準達成で「次の海洋試験」
フォーラムでは、「MH21-S」の山本晃司プロジェクトマネージャーが講演した。海底面から数百メートル程度の地層などに分布するメタハイは、固体状態で存在しているため、エネルギーを投入してガスなどの流体にしなければ産出できないことを説明。そのため、井戸の中の圧力を下げることでメタハイを分解して取り出す「減圧法」を試みていることを紹介した。
また、生産の経済性の基準として、開発できない分も含めた原始資源量で100億立方メートル以上が集まった濃集帯があることや、井戸1本あたり日産5万立方メートル以上が必要であることなどを示した。山本氏は「これらの基準が達成できれば、次のフェーズでまた海洋産出試験という話が出てくる」と語った。
米国と連携して、アラスカ北部の永久凍土で陸上産出試験も計画している。これまでの試験では、井戸1本につき24日間しか産出させたことがなく、アラスカでは半年から1年ほど生産を続け長期データを取得したり、産出したメタハイを世界で初めてエネルギー源として自家消費したりすることを目指している。22年第1四半期にガス生産開始を予定する。
講演した「MH21-S」の沖中教裕氏は、アラスカでの試験を通して「海洋で数カ月程度の連続生産が可能な技術の見込みを得る」ことなどを目標とすると語った。