2020.12.25 【5Gがくる】<24>ローカル5G×VRでビジネスが広がる ②
オンラインばかりのニューノーマル(新しい日常)な日々、テレワークで目や頭が疲れた時、気晴らしに歩いてオフラインショッピングに出かけることがある。
仕事柄、近くの携帯電話ショップや家電量販店をのぞくことがあるのだが、スマートフォンやゲームの新機種の合間に大きな「VR」という立て看板が目立つようになった。
その中で目を引くのが5G対応チップを搭載したフェイスブック社の「Oculus(オキュラス)Quest(クエスト)2」だ。
VRが5Gと共にこれほどまで脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか?
以前、VRシステムを開発しているある社長に、5Gによるワイヤレス化を勧めたことがあった。ところが、その社長からは「5Gは必要ないね。VRに必要なのはCPU(中央演算処理装置)の高速性だから」と言われてしまった。
確かに、1年ほど前のVRと言えば、専用のハードウエアやPCにHMD(ヘッドマウントディスプレイ)がUSBケーブルで接続されている有線型が主流だった。そもそもVRは、PCなどに映し出す、頭を動かしても画面が変わらない単なる高精細映像とは違う。
基本は「3DoF」
VRには、全天周360度の3D高精細映像によるバーチャル空間を再現すると同時に、この仮想空間内で頭や身体を動かせば、視界を巡らしたり接近したりするように画面が変わるインタラクティブ(相互作用)性が求められる。
VRにおける動きの〝自由度〟のことを「DoF(Degrees of Freedom)」という。その基本は、頭の3軸の動きに対応する「3DoF」だ。
HMDを装着した頭を動かすことによって、視界を左右に広げる動き、視界を上下に広げる動き、それに頭を傾ける動きを加えると、視界が全天周になり、普段の私たちが見ている世界と同じになる。
技術的には、HMDに搭載されている磁気センサーや加速度センサー、角速度(ジャイロ)センサーなどで頭の動きを逐次感知し、その動きを追尾(トラッキング)しながらリアルタイムで3Dの高精細映像をHMD内の画面にストリーミングする仕組みだ。
「6DoF」に対応
「3DoF」なら身体を動かす必要はないため有線型のHMDでも動作できる。しかし、最近は、「Oculus Quest 2」をはじめ、「6DoF」に対応したワイヤレス型HMDも登場している。「6DoF」とは、「3DoF」をベースに身体を前後、左右、上下に移動する三つの自由度を加えたものになり、視点だけでなく身体の動きも入る。
例えば、バーチャル展示会の入り口に立っているとしよう。6DoF対応HMDでは実際に歩く動作によって、仮想展示場の中を移動し目的のブースに近づくことができる。仮想ブースの中で腰をかがめれば、展示されている新製品を目の前で見ることができる。
身体の動きにも対応するため有線型HMDではケーブルが邪魔になるだろう。そこでワイヤレス型HMDが必要となるわけだ。さらに、違和感なく仮想空間に没入するには5Gが必要となってくる。その理由は?(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉
【お詫びと訂正】記事掲載時に「5Gに対応したフェイスブック社の『Oculus Quest2』」と記載いたしましたが、「5G対応チップを搭載したフェイスブック社の『Oculus Quest2』」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。(21年1月15日)