2021.01.20 新電力立ち上げで「一気通貫サービス」川崎重工、ごみ処理プラント発電
20年10月に完成させた、静岡県富士市の「市新環境クリーンセンター」
総合重機大手の川崎重工業(神戸市中央区)は、廃棄物処理プラントで発電された電力を中心に取り扱う新電力を4月に立ち上げる。市町村などが地域で収集する食物残さなどのごみを焼却するプラントで、バイオマス発電されるカーボンフリー電力を小売りする。グループの商社、川重商事(同)の事業を切り出す形で子会社を設立し、事業を本格化させる。
設立するのは、新電力「カワサキグリーンエナジー」(同)で、川崎重工と川重商事が出資する。川重商事は15年に、電力小売りに参入し、社内の一部門として、電力を卸売り市場などから調達して販売してきた。
一方、川崎重工は、市町村などが、ごみを焼却処分するプラント建設を受注し納入してきた。これまでに全国で180カ所に及び、そのうち約50カ所では自治体側の要望に応じて、焼却時に出る熱などを利用してバイオマス発電できる能力も付加している。その年間の総発電量は計約150万MWhに達するという。
こうした電力を新会社が引き受けて販売する。従来は、自治体側が独自に自家消費したり、余剰分を電力会社などに売電したりしてきた。だが、近年の環境意識の高まりなどで、「当社が関わったプラントでの発電電力を積極的に取り扱っていく」(川崎重工)こととし、新会社の設立に至ったという。
売電先として、自治体の公共施設や、環境意識の高い民間企業などを想定。将来的には、水素燃料由来の電力を取り扱うことも検討する。新会社では、販売電力量を現状の7万MWhから、25年度には5倍の35万MWhに拡大させる計画だ。
プラント建設の提案メニューを多様化
また、川崎重工では、プラント建設事業自体への効果も期待する。プラント建設から運営、発電した電力のオペレーションなどまでを「一気通貫でサービス提案できるトータルビジネス」(同社)の強化を目指す。
新会社では、発電した電力の引き取りだけでなく、エネルギーシステムの企画・開発などの事業も手掛ける。自治体側にとっては、新会社を通して、自治体内の学校といった公共施設に供給できれば「地産地消のサイクル」を構築できたり、発電した電力の売り先や適切な売電量の判断などにも困らず、業務を効率化できたりする。こうした内容を、プラント建設前から提案できれば、「自治体側にも魅力的な事業になっていく」(同社)という。
川崎重工コーポレートコミュニケーション部は「グループでは、モノ売りからコト売りに変えていくという考えがある。事業の在り方として、サービス業にも力を入れ、グループとして成長していきたい」と話している。