2021.04.22 【関西版】東洋電子工業、カンボジアに気象情報システム納入
現地職員によるシステム設置作業風景
東洋電子工業(京都府京田辺市、林夕路社長)はこのほど、気象情報システムをカンボジアに納入した。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で活動に制限がある中、テレビ会議システムなどを活用してシステムを構築。ほかの国でも同様の形でシステムの導入が進みつつある。
林社長は「コロナ前は現地に赴き、現地でシステムの構築や情報共有を行っていた。リモートではよりコミュニケーションが取れるようになった」と話す。
カンボジアは、国連の世界気象機関(WMO)が運営している全球規模の気象情報通信網に加盟しており、日々の気象情報の交換を実施している。各国の地域で観測された気象データは世界中に発信され、日本をはじめ、世界の主要国でスーパーコンピューターを利用した数値予測計算の初期値として利用されている。その計算結果が各国へフィードバックされ、それぞれの国の天気予報などに活用されている。
近年、その全球気象情報交換ネットワーク(GTS)の改善が進み、また新世代のWMO情報システム(WIS=WMO Information System)も始動している。これらのことから、カンボジアでもそれら新システムへの移行対応が課題となってきた。
昨年、WMOと日本の気象庁の協力によってカンボジアのシステムの近代化を支援することになり、必要機材が国際入札によって整備された。それに使用するソフトウエアとその実装から運用化に至る実施業務を同社が受注した。
しかし、新型コロナウイルスの影響により日本から技術者を現地へ派遣するのが困難なことから、現地気象局の職員と協力して日本からのリモート操作によって業務を実施することになった。そして両サイドにビデオカメラを備え、遠隔制御機能を利用して作業を実施した。
昨年11月中旬にシステムの試験が完了し、その後、システムの運用に伴う研修もオンライン会議システムを利用して実施し、システムの運用へと移行した。現地気象局の職員を日本へ招聘(しょうへい)して研修を実施することなく、日本から技術者を派遣することなく、こうしたシステムの運用化は同気象局では初めてのことであった。
「リモートでよりコミュニケーションを取れるようになったと感じる。カンボジアからの参加者も自律意識が高まり、真剣に話を聞いてくれる。現地のモチベーションも高い」(林社長)。カンボジアでは今回のシステム導入により、近年顕著化している自然災害に対する防災能力の向上に寄与すると期待されている。
同社では昨年3月以降、同様の方法によるWISと気象衛星受信システムの設置と運用化をフィリピン向けに実施している。この実績を踏まえ、フィリピンから国際航空情報交換システム(AMHS)を受注。これを受けて各国の国際空港の航空管制に利用される国際航空情報交換システムを開発中。完成次第、導入する予定だ。
AMHSは現在、世界各国で新世代システムへの更新が始まっており、今回のフィリピン向けシステムもその流れに沿うもの。今後、リモートでの導入方法による各国へのシステム導入を積極的に推進する。
林社長は「ほかの国からも気象情報システムのリモートでの導入の話を頂いている。気象からAMHSにもつなげ前向きに取り組みたい」と語った。