2021.07.05 製造装置各社 中国を中心に製造業活況半導体、電子部品、部材不足で納期対応が新たな課題に

中国を中心に活況を呈する製造業

実装機など製造装置の需要拡大の一方で部品不足から納期対応が新たな課題に実装機など製造装置の需要拡大の一方で部品不足から納期対応が新たな課題に

 製造業が活況を呈し、製造装置各社も月によっては過去最高売り上げを更新するなど順調に推移。特に中国が好調なほか、東南アジアもコロナ禍からの回復途上にあり、生産増強のために工場を増築する日系EMS(電子機器製造受託サービス)企業も見られる。需要拡大の一方で半導体や電子部品、部材が不足し、納期対応に追われる新たな課題が表面化している。

 パナソニック スマートファクトリーソリューションズは電子部品実装機、半導体製造装置、溶接機、溶接ロボットなどを主力にグローバル事業を展開している。秋山昭博社長は「コロナ禍から回復した中国が好調で、実装機の納入先もフル稼働している。半導体などの不足が表面化し納期対応が課題」と話す。半導体・デバイス需要の拡大、EV化・自動運転、第5世代移動通信規格5Gの普及、建機・造船などを成長分野に製造業のプロセス革新を加速する。

 半導体後工程と電子部品実装の融合を事業領域に2019年7月に発足したヤマハロボティクスホールディングス(YRH、東京都港区)は3年目に入り本格的な事業を展開している。加藤敏純会長は「ヤマハ発動機の実装機出荷台数は3、4月で過去最高を更新した。YRHグループの新川のボンディング装置も動いている。5GやEVはむしろこれから本格的な投資が始まり、半導体需要も拡大する。一方で半導体や電子部品は品薄により調達が厳しくなっており、納期が大きな課題だ。半導体メーカーも最先端プロセスには投資をするが、現在不足している60ナノや40ナノといったレガシー半導体には投資をしないので半導体不足は今後も続く」と分析する。

 安川電機は、コロナを抑え込んだ中国の5G、自動車・半導体などの活発な設備投資から、ACサーボドライブ事業が好調に推移。中国以外の地域の売り上げも回復している。好調な需要を加速しようと、世界最高レベルの速度周波数応答を備えたACサーボドライブ「Σ-X(シグマ・テン)」シリーズの受注を3月に開始した。

 タキゲン製造(東京都品川区)はさまざまな業種に向けて産業用金具を展開している。顧客の要望を「カタチ」(製品)にする独自のモノづくりで売り上げを伸ばす。田中貢社長は「今年度に入って業種間の格差はあるが、全体としては売り上げも当初の計画通りに進み、通期では前年度を上回ると予想している。一方で材料や部材不足を懸念している。ナイロン系樹脂、鋼材、真ちゅうなどが不足し、価格も高騰し始めている」と材料調達への懸念を示した。

 EMS分野も好調に動いている。飯田通商(東京都千代田区)は中国・東莞、タイ、ミャンマーでEMS事業を展開し、タイを中心に売り上げを伸ばす。森山篤取締役生産本部長は、事業拡大について「タイでは高密度実装、独自開発の設備技術によるタッチパネルの貼り合わせ事業を中心にEMS事業を展開している。日系企業が主だが、貼り合わせ事業は新規受託も増えており、パネルの大型化にも対応する。事業は順調で、組み立てラインも立ち上げた」と説明する。

 カトーレック(東京都江東区)はEMS事業の生産拠点を、国内(高松・本社工場、松山)と中国(蘇州、広州)、ベトナム、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、メキシコ(ティファナ、グアナファト)、インド(プネー、合弁企業)に設けている。日系企業を主とするが、現地企業の生産受託も増加していることから、20年にベトナム、インドネシア両工場を増築。フィリピン工場には新たに第3棟を設け、今年6月に竣工した。この第3棟により、フィリピン工場の延べ床面積は計1万7130平方メートルとなり生産能力をさらに増強した。

 製造装置商社のマス商事(横浜市港北区)は、ヤマハ発動機(ロボティクス事業部)代理店として実装機を中心にSMTに関わる製造装置を幅広く扱う。国内のほか海外展開する日系企業向けのビジネスに対応して中国(蘇州、深圳)、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム、メキシコ、インドに営業拠点を構えている。高城久副社長は「国内はさまざまな補助金制度の効果もあり、電子機器製造業が活発に動いている。海外では中国の電子機器製造が昨年秋ごろから活況を取り戻して以降、車、通信、社会インフラ、民生、EMSなどが好調を持続し、日系企業のSMT設備受注も増加。タイ、マレーシア、ベトナムでは受注も活発だ。一方で部材不足などから製造装置各社の製品の供給遅れが懸念される」と話す。

 エレクトロニクス商社のシナダイン(東京都大田区)は米国、欧州、台湾など海外半導体メーカーを主力に扱う。吉田一社長は「成長性のある通信、ヘルスケア、産業機器、環境技術、航空宇宙などの市場開拓を進めている。4月には創業45年の中で過去最高の売り上げを記録し、4~6月で年間予定の半分を受注した。5Gが本格的に立ち上がり、基地局向け光トランシーバーの需要が拡大している。ウエハー価格の高騰や半導体不足で納期が懸念されるが、納期対応に全力を挙げる」と語る。